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連邦道路1号線で窒素酸化物削減のため30キロの速度制限

 「連邦道路1号線」、こう聞くと、日本の国道1号線に匹敵するドイツの国土幹線だと思うだろう。しかし、アウトバーンが国土幹線となっているドイツでは、少し事情が異なる。日本では、たとえば市街地を通っている国道4号線に対してバイパスを建設した場合、バイパスが国道4号線になり、旧国道は県道に格下げされる。一方、ドイツでは連邦道路1号線のバイパスとして建設されるのはアウトバーンで、もとの連邦道路は依然として連邦道路である。例外的に、もとの連邦道路を拡幅整備してアウトバーンに格上げすることがあり、その場合は当該区間は連邦道路でなくなり、たとえばアウトバーン40号線になる。だから、連邦道路を走っていると、いつのまにかアウトバーンに入っていることがある。

    逆に、アウトバーン40号線でドルトムントに入ると、いつの間にか連邦道路1号線に変わる。そこには交通信号や平面交差点があり、一部では中央分離帯をLRTが走る。さらに、沿道に住宅が建つ区間には50キロの速度制限まである。この規制は住民が裁判で獲得したもので、行政は50キロ制限は行いたくなかった。ドイツでは住宅地内部には広く時速30キロ制限が見られるが、片道が3車線ある幹線道路で50キロ制限が行われているのは、かなり珍しい。

ゼルベック地区の連邦道路1号線に設置された時速30キロ制限の標識。長方形のプレートには、Luftreinhaltung(大気浄化)と書かれている。(Der Westen紙より)
 右の写真は、ミュルハイム西部、ゼルベック地区の連邦道路1号線である。片道1車線ずつしかないが、ミュルハイムから国土幹線であるアウトバーン3号線へとつながる重要な幹線道路で、多くの車が通行している。その連邦道路に、延長約1キロにわたって写真のように「時速30キロ制限」の標識が設置されている光景は、非常に珍しい。これは、ドルトムントのように住民が裁判で勝ち取ったものではない。窒素酸化物対策として昨年2016年の2月末から実施されているもので、一種の社会実験である。

 ドイツで「燃費が良い」と好まれているディーゼル車には、窒素酸化物の排出という難点がある。EU(欧州連合)は窒素酸化物に対して規制を定め、限度を上回る都市に対して強く対策を求めており、ルール地方に限らず、ドイツの大都市はこれに悩まされている。たとえばミュルハイムの東に隣接するエッセンは、このまま進むと古いディーゼル車の走行を禁止しなければならなくなるので、何とかしてそれを防ごうといろいろ対策を試みているが、うまく進んでいない。

 写真にあるミュルハイムのゼルベック地区でも、2012年から窒素酸化物の測定が始められた。EUの許容値は40μg/m3だが、ここは毎年のようにオーバーしていて、2014年も平均が43μg/m3になった。対策を検討した専門家は、ゼルベックでは信号による停止と発進が多く、北方向へ1%弱の上り坂になっていることも関係しており、30キロの速度制限を行えば改善される可能性が高いと報告した。この案に対し、住民からは「本当にこれで大丈夫なのか」と疑問が出され、市の交通委員会でも「時速30キロ制限に効果があるのか」と懐疑的な意見が出された。

 結局、EUから対策を強要される前に、「まず30キロの速度制限を試み、効果が見られない場合は大型トラックの規制を行う」という線でまとまった。試行から1年が経過し、2016年の平均は37μg/m3と許容値に収まった。行政として、これは予想以上の成果である。他の測定点との比較しても、2016年に明確に低減した地点は見られず、明らかに30キロ制限の効果だと判断された。

 こうして、ゼルベック地区の速度制限は、当面このまま継続されることに決まった。ただ、この成果はゼルベック地区の特殊な条件のおかげなので、他の基準オーバー地点でも速度制限が行われそうな気配は、今のところ見られない。

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| アウトバーンや交通規制 | 17:26 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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新たなアスベスト発見で「白い巨人」爆破が大幅延期へ

 春に、「白い巨人」1棟目の爆破が9月3日に決まったことを伝えたが、それが大幅に延期されることになった。延期の原因は、新たなアスベストの発見である。これまで行っていた調査が不十分だったことは確かだが、単純に「見落としていた」ということではない。アスベストの探索技術が向上し、それを適用して再調査した結果、新たに発見されたのだそうである。

新たなアスベストの発見で作業が中断している、爆破予定の「白い巨人」。(Der Westen紙より)
 これまで行われてきた爆破準備は、2年前に提出された報告書に基づくものであった。その後、新たなアスベストの分析規定と、その分析手続きがつくられた。そこで、念のために再調査を行った結果、これまでアスベストがないと思われていたパテにもアスベストが混入されていることがわかった、ということである。これからアスベストの除去方法を検討し、除去作業を実施した後に爆破されるので、早くても来年になる、ということである。

 もちろん、この問題はデュイスブルクの「白い巨人」に限られず、ドイツ全土で起きている。他都市でも、解体作業が中断した高層ビルがあり、問題になっているそうだ。逆に言うと、過去には、アスベストを含んだパテが残っている建物を爆破した可能性があるわけで、少し気味が悪い。

 市にとっては、建物取り壊しの費用が増加することも、頭が痛い。州が取り壊し費用の80%を補助することになっていたが、今後発生する追加費用については、州との再交渉が必要になる。この点で微妙なのが、5月中旬に行われた州議会選挙の結果、州政権が、SPD(社会民主党)と緑の党の連立から、CDU(キリスト教民主同盟)とFDP(自由民主党)の連立に転換する見通しになっていることである。まだ連立協定の交渉中だが、ルール地方を、SPD政権時代のように優しい眼で見てもらうことは期待できない。近年、ルール地方に州と連邦から多額の補助金が流され、「白い巨人」の取り壊しもようやく動いたという経過がある。動き始めた工事が止まってしまうことはないと思うが、いろいろ紆余曲折が生じる恐れがある。とにかく、「白い巨人」は、今後も多くの話題を提供すると予想される。

| 人口減少や住宅 | 23:04 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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自転車コンクールの機会に生き残りを目ざす「貸し自転車」

 今年も、コンクール「都市を自転車で走ろう」の季節がやって来た。今回は、5月20日(土)から6月9日(金)までの3週間に、連邦全土で自転車走行キロ数が競われる。昨年は、初日にミュルハイム駅を目ざして集まるサイクリング「スター走行」が行われた。今年のスター走行は、エッセンの世界遺産「ツォルフェアアイン炭坑」を目標地点として、エッセンに加え、デュイスブルク、ミュルハイムやオーバーハウゼンから参加者が集まった。

ミュルハイムの都心近くにある貸し自転車ステーション。整備された自転車が5台並んでおり、あまり利用されていない印象を受ける。(2012年撮影)
 さらに、今年の開始日である5月20日には、10都市で貸し自転車システム「ルール大都市圏自転車」を運営しているネクストバイク社が、6時間の自転車無料利用を提供した。これは、ルール大都市圏自転車にとっては、いわば「生き残りのための宣伝」である。利用が思ったように伸びないため、ネクストバイク社は赤字に苦しんでおり、現在の貸し自転車システムがいつまで続くのか、予断を許さない状況にある。

 この貸し自転車が誕生したのは、連邦が2009年に行った自転車利用に関するコンクールで選定された結果である。応募したのは、ルール大都市圏の主要10都市(よもやま通信6都市と、隣接するボトロップ、ゲルゼンキルヘン、ヘルネと、東側のハム)、ルール大都市圏広域連合と、ライン・ルール交通連合によるグループである。2010年の欧州文化首都年に、自転車1500台、ステーション150箇所で開始し、2012年に3000台へと拡充する計画だった。そして、連邦補助がなくなる2013年からは、自立して運営できることを目ざす。

 利用は簡単で、料金も安い。事前の登録が必要だが、ステーションに行き、解錠のためのコードを入手すれば、すぐに自転車を利用できる。自転車を借り出したステーションに返却する義務はなく、どこのステーションに返却してもいい。料金は1時間1ユーロだが、1日利用は8ユーロ。そして、バスや電車を利用した場合、1日に1回は無料で30分間利用できる。このように、電車やバスを利用した後に「目的地まで残る距離」のための片道利用も可能な、「公共交通の一部」として利用しやすいシステムが考えられた。

 プロジェクトは、2010年6月に開始した。ところが、開始してみると、期待したほど利用が伸びず、運営するネクストバイク社が赤字に苦しむこととなった。ルール大都市圏ほど広域ではないが、他にも貸し自転車システムを実施している都市がいくつかある。どこも赤字で、市が補助しているのが実態である。しかし、よもやま通信で何回も伝えているように(たとえばこのように)、ルール地方の各都市は財政赤字に苦しんでおり、とても補助する余裕はない。そこで、ネクストバイク社は、大学などと包括契約を行い、学生1人あたり1ユーロ50セントを受け取って利用毎に当初60分を無料にするなど、利用拡大へ工夫を重ねてきた。

 それでも、2015年にも30万ユーロの赤字を出し、撤退が検討された。議論の結果、ステーションのスクラップ・アンド・ビルドを行い、自転車1700台、ステーション276箇所で頑張ってみることになった。2017年に入り、オーバーハウゼン市役所も大学に準じた包括契約を行うなど、明るいきざしもあるが、楽観はできない。5月20日の6時間無料はあまり活用されなかったようだが、何とか「生き残ってほしい」、と願っている。

| 自転車や歩道・舗装 | 18:33 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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エッセンで土曜日に無包装の食料品店が開店

 今週の土曜日に、エッセン市中央駅の南に、ルール地方初の「無包装店」がオープンする。日本でも、買い物の際の包装が問題とされ、最近ではレジ袋が有料の店舗が主流になっている。しかし、自分で買い物袋を持って出かけても、買ってきた商品を食べる際には、その商品が包まれていたパックがごみとして出る。ごみになる袋が1つで済む場合は、まだいいかもしれない、たとえばアメ玉を買ってきて食べようとすると、アメが袋の中でさらに個包装に包まれているのが主流である。なかには、プラスチックのトレイまでついている場合がある。

開店準備を進める店内で、購入する方法を示してみせるテスケさん。(Der Westen紙より)
 こんどエッセンに開店する店は、いわば「完全無包装店」である。客はタッパーや瓶を持参し、アメ玉をそれに入れて重さを量り、出てきたラベルを貼ってからレジへ向かう。つまり、商品だけをばら売りで売る、「完全無包装店」である。

 このような無包装店は、2年ほど前、ボンに登場したのが初めてだそうである。店舗を経営するダイネットさんは、旅行でオーストラリアを訪問した際に、スーパーで、ばら売り商品がドイツよりはるかに多いことに気づいた。帰国後、持続的な食料品店を目ざし、ばら売り店の構想を長くあたためていたが、夫と会社を設立し、開店にこぎ着けたそうである。

 ダイネットさんによると、「ばら売り商品の価格は、例外なく包装のある同質品より有利」である。そして、ごみはリサイクルに入る前に避けられる、と話す。もちろん、肉や牛乳のように、何らかの包装が避けられない商品もあるが、その種の例外扱いはできるだけ少数にしたいと考えているそうだ。

 この種の無包装店は、最近、ドイツの各地に見られるようになっている。今回、エッセンに開店するテスケさんの場合は、ベルリンで無包装店を見たのがきっかけとなり、仕事を辞め、準備を進めた。そのベルリンの無包装店は、インターネットを通じて開店資金を寄附で集めたそうである。

 エッセンのテスケさんの場合も、フェイスブックを通じて店を宣伝している。すでに多数の人が書き込んでおり、開店を待っている様子がわかる。無包装店の経営も大変だろうが、買いに来る客の方にも一定の覚悟が必要になるだろう。エッセンの店が順調に客を集め、発展していくことを期待している。

| エネルギー・地球環境 | 16:48 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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ボーフム中央駅の特急停車復活とオンライン請願

 まず日本の話しから:私が利用しているJR東日本の東北本線や東北新幹線では、電車の発車は時刻によって異なる、たとえば1時間に1本走る電車なら、8時40分の次は9時37分というように。当たり前のことだと思っていたが、ドイツで別の考え方を学んだ:8時40分の次の電車なら、当然9時40分である。時刻によって「何分か」と調べる必要がないので、公共交通利用者にはありがたい。そして、ドイツでは、都市の人口規模によって特急停車駅が決まっていて、特急停車駅には全ての特急が停車する。このシステムがわかり、ドイツで列車を利用するのが非常に楽になる。ただ、問題は列車の遅れである。公共交通にとり、この「定時性」は重要な要素である。

正面からボーフム中央駅を眺める。(2002年撮影。カワカミ都市計画研究室提供。)
 ところが、昨年12月の冬ダイヤで、ボーフム中央駅に関してこの原則に反するダイヤ変更行われた。ボーフム中央駅には計105本の特急と急行列車が停車していたが、昨年のダイヤ改正で、そのうち15本が停車しなくなったのである。理由として、鉄道から「列車の遅れを少なくするため」と説明があった。

 なぜボーフム中央駅が対象になったのかは、上にあるブログの標題に使用している地図の画像を見ればわかる。実は、この「ルール地方よもやま通信」の対象6都市のうち、オーバーハウゼンとミュルハイムを除く4都市が特急停車駅である。デュイスブルクの南には州都デュッセルドルフが隣接しており、この地域はドイツで最も特急停車駅が密集している。ドルトムントとエッセンはルール地方の中心であり、デュイスブルクも人口が50万人弱で、鉄道分岐点として重要である。一方、ボーフムは人口が40万人に満たず、ドルトムントとエッセンに挟まれている。つまり、隣の市まで行けば特急に乗り換えられるので、停車しなくなっても影響は大きくないと思われる。鉄道も、「乗り換えれば良く、これまでより時間が5~10分余分にかかるだけ」と説明していた。

 ところが、実施してみると、「5~10分」の差で済まない場合があることが明らかになった。原因は、「定時性の不足」である。たとえばボーフムから東へ向かう場合、ドルトムントで特急に乗り換えることになる。うまく行く場合が多いが、特急とローカル列車の時刻が調整されていないため、ローカル列車が遅れて特急に間に合わない場合が出てくる。そうなると、次の列車を1時間近く待たねばならない。こうして、通勤者を中心として、停車復活を求めるオンライン請願が始まった。賛同者がインターネットで署名する活動で、3月はじめに500名に達し、下旬には第一段階として連邦へ提出する1873名の署名が市長に預けられた。署名はその後も増え続け、すでに3千名を超えている。

 しかし私は、この署名活動が成果を得るとは思っていなかった。この地域では、これまで数回のオンライン請願が行われていたが、成果が得られた例はなかったからである。ところが、今回は成果があった:請願を背景にボーフム市長が鉄道と交渉した結果、次の冬ダイヤ改正でまず7本の停車が復活することが発表された。鉄道によると、「ボーフムに停車しないことによる定時性の回復は0~15%」だったそうなので、予想ほど効果がなかったのかもしれない。それでも、一旦決めて実施したことを撤回するには、かなり勇気が必要だったことと思う。

 現在、「どうなるのだろうか」と思って観察している住民運動がもう1件ある。それは、オーバーハウゼン市北部の貯蓄銀行支店の閉鎖反対である。貯蓄銀行は、日本の郵便局に相当する庶民金融機関で、市の子会社になっている。近年、顧客の行動が変化し、小規模な支店の利用が少なくなっており、閉店してATMだけにする例が増えている。昨年はデュイスブルクで、住民の反対を押し切って数店舗が閉鎖された。そして先月末、オーバーハウゼン北部でも2店舗の閉鎖が発表され、そのうち1店につき、住民が反対運動を組織している。閉店を取り消すのは難しいと思うが、もしそうなった場合は、このブログで紹介したい。

| 公共交通 | 17:28 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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