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エスカレーターでは歩かずに、左右とも立つべし

 ルール地方の新聞を見ていると、時々、他地域の情報も入ってくる。数日前は、ミュンヘン中央駅の興味ある情報が報道されていた、「エスカレーターでは歩かずに、左右とも立つべし」という規則を導入した、という話しである。

 東京と異なり、ヨーロッパでは「左は歩く、右は立つ」がエスカレーター利用の不文律となっている。40年以上前の話しなのでうろ覚えだが、ロンドン地下鉄にある木製エスカレーターの各段の間に、右側には"stand(立つ)"、左側は"Walk(歩く)"と書かれていて、「なるほど、合理的だ」と左側を歩いた記憶がある。ドイツでも、右側に"Stehen"、左側に"Gehen"と書かれることがある。

ミュンヘン中央駅のエスカレーターに設置された標識。ドイツ語と英語で説明がついている。(Patrick Schultz氏のツイッターより)
 ミュンヘン中央駅では、少し前に、2機のエスカレーターが改修されることになった。残る1機しか利用できなくなるので、混雑がかなりひどくなることが心配される。そこで、混雑への対策として「歩行禁止」が導入されることになった。エスカレーターの昇り口には、右の写真のような標識が付けられた。標識の上側が「左は歩く、右は立つ」状況を記しているが、左側の歩く人は赤色で記されており、「歩行禁止」を示す。下側が左右とも立っている状況で、緑色の大きなチェックマークが、「この方式を利用するように」と示している。

 「乗客が両側に密に立てば、エスカレーターの能力がより良く活用され、最終的に全員が早く目的地点に到達できる」ことは、ロンドン地下鉄が2016年にホルボーン駅で実施した調査で確認されているそうだ。そこで、ネットを検索してみたところ、ユーチューブに紹介されていることがわかった。それがこの映像である。たしかに、両側に立った場合には、片方を歩く場合より3~5割ほど多くの人が利用できている。原因は、車の「車間距離」に相当する「人間距離」にある。歩くとスピードがつくので詰められず、立つ場合に比較して広い間隔が必要となり、輸送人数が減少する、ということである。

 日本語の情報を求めてさらに検索を続けると、ホルボーン駅について、「立ってるほうが結局速いという結論が導かれた」という記事を見つけた。情報の元となったガーディアンの記事によると、2002年にも調査が行われたようで、2002年の結論を詳しく調べるために、2016年に半年かけて実験されたのかもしれない。

福島駅ホームのエスカレーターでよく見られる、左側はいっぱいで、右側が空いている光景。エスカレーターの輸送力が、半分しか生かされていない。(2017/08/13、2/3番線ホーム)
 多数の人が一斉に出口へと急ぐロンドンや東京のような大都市では、歩く人もかなり多いので、左右とも立っても輸送力が3~5割しか増加しないのだろうが、私が住んでいる福島では事情が異なる。10割、つまり2倍近い増加が見込める。左の写真が示すように、歩く人が少なく、ほとんどの人が立つにもかかわらず、右側を空ける習慣が定着してしまったからである。だから、左右両側に立つと輸送量がほぼ2倍に拡大し、同じ人数を半分の時間で輸送できる。右を空ける習慣が、エスカレーター昇り口の周囲に利用しようとする人による滞留を発生させ、ホームから出るのに時間がかかるという結果を招いている。

 もちろん、福島駅でも、エスカレーターの昇り口には、歩いたり走るのを禁止するマークが描かれている。しかし、エスカレーター内側の見えにくい位置に、遠慮がちに描かれているので、効果は期待できない。急ぐ人は階段を利用すればいいわけだから、「急ぐ人は階段へ」とか、「両側に立ち、多くの人を輸送しよう」などという説明を追加することも考えてみてほしい、と思ったことである。
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| 公共交通 | 15:30 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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ディーゼル車は窒素酸化物による危機を乗り切れるか

 この2週間、ドイツでディーゼル車について大きなニュースが続いた。まず7月28日(金)に、南ドイツでタイムラー車の本社があるシュツットガルトの行政裁判所で、「ディーゼル車の走行禁止もあり得る」ことを認める判決が出された。裁判では、走行禁止があり得ることを予想できない時点でディーゼル車を購入したドライバーの権利と、窒素酸化物の汚染に苦しむ住民の健康保持の利害の軽重も問題とされたが、裁判官は明確に「健康保持」を優先させた。原告はドイツ環境援助という環境団体で、車の排気ガス汚染がひどく、EUが定める許容値を超えている16都市に対し、大気浄化計画の改訂を求めて提訴していた。

 このような窒素酸化物を巡る争いの背景にあるのが、2年弱前に発覚した、フォルクスワーゲン(VW)グループによる排ガス不正事件である。違法なソフトウェアを自動車に組み込み、排気ガス排出試験の時だけ十分な対策を行い、路上を走る際は窒素酸化物をはるかに多く排出していた、という事件である。事件の後、どのような対策が行われるのか関心を持っていたが、フォルクスワーゲンは逆に世界での販売台数を伸ばしていき、不思議に思って眺めていた。

 先週8月2日(水)には、この排ガス不正事件の後始末とも言える会合が、ベルリンで行われた。「ディーゼル・サミット」と名付けられ、連邦の担当大臣、関係州の首相、そして自動車メーカーの代表が参加した。そして、約500万台とも言われるディーゼル車のソフトウェアを無償で交換することで、窒素酸化物を減少させることが発表された。ソフトウェア交換につき、メーカーは「ディーゼル車の走行禁止より効果がある」と話しているそうだが、これには環境団体などが疑問を表明している。南ドイツ新聞によると、先のシュツットガルト行政裁判所判決は、大気浄化計画を策定する州に対し、「自動車業界が対処するということを信頼してはならない」、そして「走行禁止は、有害な窒素酸化物による高い負担を低減する最も効果的な手段である」と述べているそうである。

 問題は、今後どう進むのかである。これから、自動車メーカーはソフトウェア交換に力を入れることだろう。重要なのは、「その結果として都市の大気が実際に改善されるのか」である。もし年内に改善傾向が示されなかったら、裁判の判決を受け、来年は「ディーゼル車の走行禁止」へと踏み切る州が出てくるだろう。そうなれば、ルール地方も対象から逃れることはできない。実は、デュイスブルクの南に隣接する州都デュッセルドルフでは、すでに昨年9月に、行政裁判所が「ディーゼル車の走行禁止もあり得る」ことを認めた判決を出している。この訴訟は、現在、連邦行政裁判所で争われている。そこで、シュツットガルト行政裁判所の判決も、飛越上告され、デュッセルドルフの判決と一緒に扱われる可能性がある。

 つまり、「ディーゼル車の走行禁止の有無」を決めるのは、自動車メーカーによるソフトウェア交換の効果と、裁判所の判断である。ドイツがディーゼル車をまもることにはいろいろ議論があるが、決定が自動車メーカーの努力の実績と、裁判所の判決に握られている点は、「決定過程の公開」という点で高く評価していいのではないだろうか。もちろん、「遅すぎる」という批判はある、EUは、大気汚染が改善されないことに業を煮やし、2年ほど前から「罰金を科す」と脅しているそうだ。これを知ると、ミュルハイムが連邦道路1号線30キロの速度制限に取り組んだ背景も理解できることだろう。残念ながら、速度制限で汚染を低減できる箇所は限られており、大多数の道路では別の対策が必要なようである。

| アウトバーンや交通規制 | 14:24 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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年齢なきサイクリング:高齢者にも「風を髪で受ける権利」

 ドルトムントのニュースを眺めていて、「リクシャ」という、日本語起源と考えられる言葉があり、昔の「輪タク」(自転車タクシーの略で、戦後の一時期に活躍した)のような写真がある記事を見つけた。「都市交通に役立てようというのかな」と思い、とりあえずダウンロードしておいた。

「年齢なきサイクリング」のシンボルマーク
 数日後に読んでみると、都市交通として活用するという内容ではなく、むしろ自転車に乗られなくなった高齢者を連れだし、高齢者から昔の話しも聞くという、高齢者介護に関するプロジェクトの記事だとわかった。プロジェクトが始まったのはデンマークのようだが、すでに世界各地に広がりつつあるそうだ。ドイツでは、ベルリンやエッセンに取り組んでいる団体があり、ドルトムントでも検討が進んでいる、という記事だった。

 ユーチューブで調べると、デンマークでの首都コペンハーゲンにおける活動を紹介した映像を見つけることができた。英語で字幕がついているので、ドイツの映像よりわかりやすい。映像を見ると、プロジェクトが高齢者にも「風を髪で受ける権利」があると主張している意味も伝わってくる。この映像に出て来るコペンハーゲンは、自転車に優しい町のようだ。「コペンハーゲンの自転車改革の旅」という映像を見ると、日本と比較し、はるかに多くの自転車利用者がいることがわかる。デンマークには大きな自動車メーカーはないので、日本やドイツと比較して自転車の活用を受け入れやすい政治的風土もあると思われる。

 「輪タク」で思い出すのが、ベルリンで始まった自転車タクシーの「ベロタクシー」で、すでに日本各地で運航されている。この「年齢なきサイクリング」は趣旨がかなり違うプロジェクトで、現在の日本では「高齢者が事故の危険にさらされる」と敬遠されるかもしれない。だから、日本では「自転車に優しいまちづくり」を進めることが前提になるかもしれないな、と感じた。

| 自転車や歩道・舗装 | 14:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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産業廃棄物の丘にそびえる"虎と亀"からのメッセージ

 デュイスブルク市南部には、ライン川そばにあった亜鉛精錬工場の跡地から出た有害物質で汚染された土を積み上げ、無害な土で覆った上で、緑化した丘がある。ここに、2010年の「欧州文化首都年」の一環として、芸術作品を置くことになった(2009年に選定され、2010年に建設を始め、2011年秋に完成した)。選ばれて設置されたのが、写真のような作品で、「タイガー&タートル」という名称がつけられている。私も、近くまで行く機会があったので、ジェットコースターに似た作品に登り、歩いてきた。素晴らしい眺めで、とても気持ちが良かった。

「タイガー&タートル」を西を流れるライン川方向から見た遠景と、すぐ下から撮影した近景。近くで見ると、ダイナミックで非常に力強い感じを受ける。(2012年撮影)
 先週、デュイスブルクの美術館で、作品の作者から、制作した意図の説明を聞く会が行われた。私はこれまで、作品につけられた名称が「虎と亀」を示すことは気づいていたが、意味は全く気にしていなかった。ところが、その記事によると、この名称が、製作意図を示すキーの役割を果たしていた。

 作品の作者は、アトリエで政治や社会の問いを取りあげ、「対立について議論し、強化する」のだそうである。この作品で取りあげられたのは、「速いと遅い」というコントラストである。恐らく、この形を見て、多くの人は「ジェットコースター」をイメージするだろう。しかし、作品のところへ来てみると、そこには階段があり、一段づつ登らねばならない。だから、「速いと遅い」の対立がこの作品になったという話しは、とても良く理解できる。

 名称として虎と亀が選ばれたのは、もちろんスピードがポイントである。しかし、それだけでなく、タイガーはターボ資本主義のシンボルで、滅びる恐れもあると説明された。一方、カメは中国で賢明さのシンボルで、敗れないことも意味するそうである。この作品は、汚染土を覆って緑化した丘に設置されることも考えて製作されたそうで、作者は寿命があると考えており、「永遠のランドマーク」とは思っていないそうである。名称をドイツ語でなく英語にした説明はなかったが、英語ならどちらも"T"で始まることが関係しているのかもしれない。

 もちろん、芸術作品は、作者が考えたことを越え、人々に訴えかけるものである。「速いと遅い」のコントラストは、私たちに何を語りかけるのだろうか。みなさんも、機会があればデュイスブルク市南部へ足を伸ばし、作品に登ってみることを勧めたい。なお、私が訪問したのはたまたま日曜日だったので登れたが、曜日によっては登れないそうなので、注意が必要である。

| 居住環境や緑・公害 | 12:42 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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アウトレット建設をめぐりデュイスブルクで秋に住民投票

 今年の秋には、ドイツ連邦議会の選挙が9月24日に行われる。デュイスブルクでは、その日に、2月に行われた市議会決定の可否を巡る住民投票が、同時に行われることが決まった。これまでも、ルール地方における住民投票を何回が紹介してきたが、今回のように商業施設を対象とする投票は初めてである。これまでにブログで紹介した住民投票は、次の3件である。

ケーニッヒ通りを歩いて市役所へ署名提出に向かうイニシアティブ代表。(Der Westen紙より)
 3件とも公共施設の建設を巡るもので、全て「建設しない」ことを求めた住民側の勝利で終わっている。グラートベックでは交通公害が主な争点だったが、エッセンとオーバーハウゼンの場合は、市財政との関係が争点となった。しかし、今回のアウトレット建設をめぐる投票は、民間商業施設の建設が争点となっており、市財政への直接的な影響はない。この点で、これまでに紹介した住民投票と、かなり性格が異なる。

 計画されたアウトレットは、デザイナーズ・アウトレットセンターとされている。今年1月の時点で、売り場面積は約3万平米、店舗数は140~175と発表されている。この売り場面積と店舗数はドイツ最大だそうで、計画どおりなら、ドイツ最大のブランド商品を販売する店舗群ができることになる。このため、周辺市からは、すでに反対の声が出されている。

 公共施設の建設と異なり、アウトレット建設反対を求めた住民イニシアティブ側が今回の投票で勝利することは、かなり難しいように感じられる。アウトレットが建設され、店舗が増加することは、一般市民にとっては「好ましい」と受け止められる可能性が高い。住民イニシアティブの中心を構成するのは、都心商業者である。アウトレット建設によって都心の売上げが奪われ、その結果として空き店舗が増加し、回り回って買い物の場が減少するということを、市民がどの程度理解して行動するのかが、投票の鍵を握っている。

 もちろん、勝利の可能性もある。今回の住民投票を求める署名活動は、有権者の3%の署名が必要とされた。イニシアティブは、有権者を39万6千人と見積もり、その3%強の1万3千を目ざして署名活動を行った。結果的に2万2500と、目標を1万も超える署名を集めた点からは、イニシアティブの勢いが感じられる。集めた署名のうち、有効な署名がいくつだったのかは公表されていないが、3%をオーバーすることは確実だとして、住民投票の実施が決定された。

 これから投票まで2ヶ月半ある。2大政党のSPD(ドイツ社会民主党)もCDU(キリスト教民主同盟)もアウトレット建設を認めているので、イニシアティブが「風」を期待するのは無理だろう。商店主による草の根の訴えがどこまで市民に浸透するのか、結果が出るのを楽しみにしたい。

 なお、投票にかけられる設問は、回りくどくてわかりにくい。訳すと、次のようになる:「2017年2月1日のデュイスブルク市議会のアウトレットセンターに賛成する基本決定が廃止され、それにより、コロニー通り南の貨物駅用地へのアウトレットセンターのための建設誘導計画とその他の手続き(例:小売り構想の変更)は行わなくてよい、となるべきか。」アウトレットに反対する者は「はい」、誘致に賛成する者は「いいえ」と投票するのだそうである。もう少し分かりやすい設問にしてほしかったと感じる市民が、多くいるのではないだろうか。

| 中心市街地や近隣供給 | 14:12 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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