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デュイスブルク市民は住民投票でアウトレット進出を拒否

 先週日曜日の9月24日に、このブログでも予告していたアウトレット建設をめぐるデュイスブルクの住民投票が実施され、僅差でアウトレットセンターの進出が拒否された。デュイスブルク市議会のアウトレットセンターに賛成する基本決定を廃止して手続きを停止すべきかという質問に対し、「はい」が51.1%、「いいえ」が48.9%、という最終結果である。有権者の59.9%にあたる22万人近くの市民が投票し、差は4,683票という接戦だった。

 投票率の高さは、住民投票が連邦議会選挙と同日投票になったためでもある。連邦議会選挙という、最も多数の市民が投票に参加する機会を利用することは、市民に決定を委ねるという住民投票の趣旨に合致する上、投票のための費用も節約できる。デュイスブルクでは、同時に市長選挙も行われたため、「トリプル選挙」となり、市民の関心を高める効果があった。投票日に、たまたまデュイスブルク市内各地を視察して回っていた私は、多くの市民が投票所へと来る姿を見ることができた。

中心商店街にある都心ショッピングセンターの入口に大きく掲げられた、「はい」への投票を宣伝する緑色のパネル。投票日に都心は買物日曜日で、多数の市民がぶらつき、オープンカフェでくつろぐ姿も見られた。(投票当日に撮影)
 当初、私はこのような結果になるとは予想していなかった。これまでに成功した住民投票は、公共施設の建設を止めて費用を節減することを求めるものが中心であった。今回の投票は大型店進出をめぐるもので、店舗が増えることは一般消費者にとってはプラスなので、進出を歓迎する市民が多いはずだと思っていた。大抵の日本人も、同じように感じることだろう。進出するのが一般の大型店ではなくアウトレット店であることも、都心への悪影響を少なくする効果を有するはずである。それでも都心の衰退を心配し、進出を止めたデュイスブルク市民が多数を占めたことに敬意を表し、都心商業のために喜びたいと思う。

 選挙が近づいてくると、新聞社が結果を予想する電話調査を行った。それによると、態度を決めている者のうちでは進出反対の方が多いという結果が得られた。このためか、最後の段階では、用地を所有するクリーガーもデュイスブルクに乗り込んで宣伝に努めた。ただ、私はクリーガー側の戦略にも問題があったと思う。当初、クリーガー側は、デュイスブルク市の職場が増え、周辺から買い物に来る客も増えて市が発展することを宣伝していた。しかし、そのうちに、もし住民投票で敗れた場合、中央駅そばの貨物駅跡地は空き地のままになるという脅しも行うようになった。クリーガーは家具店で、もともとここに家具店を建設するとして連邦鉄道から用地を取得した。しかし、南に隣接する州都デュッセルドルフに進出できることになって方針を転換し、デュイスブルクを空き地のまま放置していた訳なので、この脅しは逆にクリーガーは勝手だと思わせた可能性もある。

 ところで、今回の住民投票はトリプル選挙として行われたが、各党や市長候補者は、アウトレット進出への賛否を示していた。その結果を比較すると、住民投票が市民の意思を生かす決定方法として長所を有していることがわかる。アウトレット進出の方針は、市議会第一党の社会民主党(SPD )と、第二党のキリスト教民主同盟(CDU)の賛成によって可決されたものである。今回、同時に行われた連邦議会選挙で、候補者に投票する第一票、政党に投票する第二票とも、デュイスブルク市ではSPDが最も多数の票を獲得し、次がCDUだった。そして、両党の合計は、第一票で64.3%、政党に投票する第二票でも57.0%と過半数を超えた。市長選では、アウトレット賛成を表明したのは現市長でSPDのリンクだけだったが、彼は56.9%を獲得して再選された。CDUは緑の党や市民リストなどと共同で候補を立て、その候補はアウトレット反対を表明したが、25.7%を獲得するにとどまった。

 この結果は、政党や市長候補者への投票と、特定の重要問題への投票は別で、住民投票にそれなりの効果があることを示している。もちろん、市長選で、リンク候補は「アウトレットについては投票結果を尊重する」と明言していた。だから、アウトレットに反対している市民も、安心してリンクに投票できたはずである。今回の投票結果は、住民投票という直接民主制と、市議会と市長という代表民主制の関係を考える上で、興味あるデータを提供していると言えるだろう。
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| 中心市街地や近隣供給 | 08:10 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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「砂の城」でデュイスブルクがギネス世界記録を獲得

 先週金曜日の9月1日、デュイスブルク市北部にある景域公園が、歓喜の声に包まれた。ロンドンからやって来たギネスブックの審査員が、デュイスブルクで建設された「砂の城」の高さが16.68mに達し、これまでの世界記録である14.84mを1.8m以上超えたことを確認したからである。

完成間近い「砂の城」。城の周囲で、彫刻家チームが完成を目ざして作業している。場所は製鉄所跡地に整備された景域公園の広場で、城の左奥には旧溶鉱炉が見える。(WDR紙より)

 本来、デュイスブルクはこの喜びを1年前に味わえるはずだった。しかし、昨年の試みは失敗に終わった。当時の世界記録はマイアミで達成された13.97mだったので、14m以上を目ざして作業が進められた。まず砂が羽目板で保護されて高く積まれ、上の方から彫刻家が城を掘り出していく。ところが、途中で砂が崩れてしまい、積み直された。問題は、この時に「砂に埋もれてしまった羽目板がある可能性が高い」ことだった。

 完成した城は、測定の結果、高さ14.25mと目標に到達していた。城を取り壊す際に板が出てこなければ、事後的に記録が認められる可能性があったので、入念に取り壊された。しかし、砂の中から、羽目板の一部が出てきた。ギネスのルールで、砂の内部に砂以外の物質が混じることが禁じられているため、記録は幻で終わった。

 そして今年、再チャレンジが行われた。この間にインドで世界記録が更新されていたので、目標があげられた。そして、昨年の失敗に学び、砂の基礎となる部分が深く掘られた。その効果もあり、2m近い記録更新に成功したので、「失敗は成功の元」だったと言えよう。それでも、配送されてきた砂の粒子が注文と違ったので交換されたり、途中で大雨が降ったりと、大変だったらしい。この城は9月24日まで見ることができるそうなので、デュイスブルクに行く機会がある人には、都心から北に5キロほど離れた景域公園まで足を伸ばすことを勧めたい。

 ところで、2年続けた「砂の城」つくりには、砂の手配や、城を切り出す20人近い彫刻家チームなど、かなりの資金が必要である。これまでに何回もこのブログで紹介したように、ルール地方の都市は財政悪化に苦しんでおり、デュイスブルク市も、学校にある教師用の駐車場を有料にしたり、不動産税を増税したりと、赤字脱却に四苦八苦している。そのデュイスブルク市が、大金をかけて「砂の城」のギネス記録に取り組んだのだろうか・・・?

 実は、2年続けての挑戦には、スポンサー企業があった。それは、デュイスブルク都心北の旧港湾地区に本社を置く旅行代理店シャウインスランド社である。この会社は、数年前まで市内で2番目に大きな旅行代理店だった。しかし、最大の代理店が本社を州都デュッセルドルフに移転した結果、最大の会社になった。借金に苦しむ都市に残留して市財政に貢献すると共に、ギネス記録の更新にも貢献したシャウインスランド社はとても素敵で、魅力を感じる会社である。城のギネス記録に取り組んだのは、夏休み期間に市民にイベントを提供するためで、その効果で景域公園の入場者数が大きく伸びたそうである。

| 町の話題いろいろ | 23:15 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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ミュルハイム市が氷を使う断熱実験に参加を呼びかけ

 ミュルハイム市は、地球環境を維持するため、二酸化炭素の排出削減に積極的に取り組んでおり、連邦が行う「革新都市プロジェクト」にも参加してきた。そのミュルハイムが、今、市民に断熱実験への参加を呼びかけている。

 ドイツや北欧諸国では、二酸化炭素排出削減への重要な柱の一つが「住宅の断熱」である。住宅の断熱では、ポイントとなるのが「住宅所有者が、断熱の有効性を認め、断熱改修を行う」ことである。断熱改修には経費が必要になるため、家主に納得してもらう点では、どの都市も苦労しているようである。

 今回、ミュルハイム市は、断熱実験コンクールを実施し、市民の断熱への関心を高めようと考えた。その方法は、次のようなものである。
  • 市中心部のルール川に沿ったプロムナードに、断熱のない住宅と、断熱改修を施したモデル住宅を設置する。
  • 両住宅に、280リットルの氷(重さにすると、257キロほど)を収容し、8月25日~9月10日の2週間放置する。そして市民に、両住宅でいくら差が出るかというコンクールへの参加を呼びかける。
  • 9月10日に溶けた量を測定し、コンクール結果を発表して表彰する。

 上に示したのが、コンクールへの参加者が書き込む書式(ドイツ語の部分を日本語に訳している)で、ミュルハイム市のホームページにある。もちろん賞品があり、1等は週末に電気自動車を使用すること、2等は台所のガスグリル、そして3等は建材店の商品券100ユーロである。

 「断熱実験」で思い出したことがある。現在は断熱材は身近なものになっているが、開発された当初はどのような効果があるのか、知る人は非常に少なかった。そこで、開発した会社(たしか北欧だったと思う)が思いついたのが、「暑いアフリカへ氷を送って効果を示す」ことである。送付先は、「密林の聖者」と呼ばれていたシュバイツァー博士の病院である。そのテレビ番組(ずいぶん昔のことで、ひょっとすると日立の「世界ふしぎ発見」だったかもしれない)によると、氷はほとんど溶けずに届き、みな驚いたそうだ。

 送付用に断熱材でしっかり包装した氷と、普通の住宅に入れられた氷では、もちろん溶ける速さが違うだろう。住宅の断熱に加え、氷の設置方法、気温やドアの開閉状況なども関係するので、全く見当がつかない・・・。どのような結果になるのか、9月10日の発表が楽しみである。

| エネルギー・地球環境 | 16:05 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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エスカレーターでは歩かずに、左右とも立つべし

 ルール地方の新聞を見ていると、時々、他地域の情報も入ってくる。数日前は、ミュンヘン中央駅の興味ある情報が報道されていた、「エスカレーターでは歩かずに、左右とも立つべし」という規則を導入した、という話しである。

 東京と異なり、ヨーロッパでは「左は歩く、右は立つ」がエスカレーター利用の不文律となっている。40年以上前の話しなのでうろ覚えだが、ロンドン地下鉄にある木製エスカレーターの各段の間に、右側には"stand(立つ)"、左側は"Walk(歩く)"と書かれていて、「なるほど、合理的だ」と左側を歩いた記憶がある。ドイツでも、右側に"Stehen"、左側に"Gehen"と書かれることがある。

ミュンヘン中央駅のエスカレーターに設置された標識。ドイツ語と英語で説明がついている。(Patrick Schultz氏のツイッターより)
 ミュンヘン中央駅では、少し前に、2機のエスカレーターが改修されることになった。残る1機しか利用できなくなるので、混雑がかなりひどくなることが心配される。そこで、混雑への対策として「歩行禁止」が導入されることになった。エスカレーターの昇り口には、右の写真のような標識が付けられた。標識の上側が「左は歩く、右は立つ」状況を記しているが、左側の歩く人は赤色で記されており、「歩行禁止」を示す。下側が左右とも立っている状況で、緑色の大きなチェックマークが、「この方式を利用するように」と示している。

 「乗客が両側に密に立てば、エスカレーターの能力がより良く活用され、最終的に全員が早く目的地点に到達できる」ことは、ロンドン地下鉄が2016年にホルボーン駅で実施した調査で確認されているそうだ。そこで、ネットを検索してみたところ、ユーチューブに紹介されていることがわかった。それがこの映像である。たしかに、両側に立った場合には、片方を歩く場合より3~5割ほど多くの人が利用できている。原因は、車の「車間距離」に相当する「人間距離」にある。歩くとスピードがつくので詰められず、立つ場合に比較して広い間隔が必要となり、輸送人数が減少する、ということである。

 日本語の情報を求めてさらに検索を続けると、ホルボーン駅について、「立ってるほうが結局速いという結論が導かれた」という記事を見つけた。情報の元となったガーディアンの記事によると、2002年にも調査が行われたようで、2002年の結論を詳しく調べるために、2016年に半年かけて実験されたのかもしれない。

福島駅ホームのエスカレーターでよく見られる、左側はいっぱいで、右側が空いている光景。エスカレーターの輸送力が、半分しか生かされていない。(2017/08/13、2/3番線ホーム)
 多数の人が一斉に出口へと急ぐロンドンや東京のような大都市では、歩く人もかなり多いので、左右とも立っても輸送力が3~5割しか増加しないのだろうが、私が住んでいる福島では事情が異なる。10割、つまり2倍近い増加が見込める。左の写真が示すように、歩く人が少なく、ほとんどの人が立つにもかかわらず、右側を空ける習慣が定着してしまったからである。だから、左右両側に立つと輸送量がほぼ2倍に拡大し、同じ人数を半分の時間で輸送できる。右を空ける習慣が、エスカレーター昇り口の周囲に利用しようとする人による滞留を発生させ、ホームから出るのに時間がかかるという結果を招いている。

 もちろん、福島駅でも、エスカレーターの昇り口には、歩いたり走るのを禁止するマークが描かれている。しかし、エスカレーター内側の見えにくい位置に、遠慮がちに描かれているので、効果は期待できない。急ぐ人は階段を利用すればいいわけだから、「急ぐ人は階段へ」とか、「両側に立ち、多くの人を輸送しよう」などという説明を追加することも考えてみてほしい、と思ったことである。

時刻によっても状況に差がある (2017.08.29)

 今朝は北朝鮮のミサイル発射で列車が遅れ、福島駅のホームでかなり待たされた。その間に、福島駅には列車が到着し、エスカレーターを歩いて利用する人も多く見られた。私が上の写真を撮影した夕方の状況とは、かなりの違いである。夕方は、仕事を終えた人々が家路を急ぐが、帰宅が少し遅れてもとくに問題はない。一方、朝は始業時刻があり、その上、福島駅では元気な高校生が多く降りる。こうして、エスカレーターの右側がかなり使用されていた。だからといって歩行を認める必要はないと思う、元気な高校生には、階段の方が似合っているからである。

| 公共交通 | 15:30 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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ディーゼル車は窒素酸化物による危機を乗り切れるか

 この2週間、ドイツでディーゼル車について大きなニュースが続いた。まず7月28日(金)に、南ドイツでタイムラー車の本社があるシュツットガルトの行政裁判所で、「ディーゼル車の走行禁止もあり得る」ことを認める判決が出された。裁判では、走行禁止があり得ることを予想できない時点でディーゼル車を購入したドライバーの権利と、窒素酸化物の汚染に苦しむ住民の健康保持の利害の軽重も問題とされたが、裁判官は明確に「健康保持」を優先させた。原告はドイツ環境援助という環境団体で、車の排気ガス汚染がひどく、EUが定める許容値を超えている16都市に対し、大気浄化計画の改訂を求めて提訴していた。

 このような窒素酸化物を巡る争いの背景にあるのが、2年弱前に発覚した、フォルクスワーゲン(VW)グループによる排ガス不正事件である。違法なソフトウェアを自動車に組み込み、排気ガス排出試験の時だけ十分な対策を行い、路上を走る際は窒素酸化物をはるかに多く排出していた、という事件である。事件の後、どのような対策が行われるのか関心を持っていたが、フォルクスワーゲンは逆に世界での販売台数を伸ばしていき、不思議に思って眺めていた。

 先週8月2日(水)には、この排ガス不正事件の後始末とも言える会合が、ベルリンで行われた。「ディーゼル・サミット」と名付けられ、連邦の担当大臣、関係州の首相、そして自動車メーカーの代表が参加した。そして、約500万台とも言われるディーゼル車のソフトウェアを無償で交換することで、窒素酸化物を減少させることが発表された。ソフトウェア交換につき、メーカーは「ディーゼル車の走行禁止より効果がある」と話しているそうだが、これには環境団体などが疑問を表明している。南ドイツ新聞によると、先のシュツットガルト行政裁判所判決は、大気浄化計画を策定する州に対し、「自動車業界が対処するということを信頼してはならない」、そして「走行禁止は、有害な窒素酸化物による高い負担を低減する最も効果的な手段である」と述べているそうである。

 問題は、今後どう進むのかである。これから、自動車メーカーはソフトウェア交換に力を入れることだろう。重要なのは、「その結果として都市の大気が実際に改善されるのか」である。もし年内に改善傾向が示されなかったら、裁判の判決を受け、来年は「ディーゼル車の走行禁止」へと踏み切る州が出てくるだろう。そうなれば、ルール地方も対象から逃れることはできない。実は、デュイスブルクの南に隣接する州都デュッセルドルフでは、すでに昨年9月に、行政裁判所が「ディーゼル車の走行禁止もあり得る」ことを認めた判決を出している。この訴訟は、現在、連邦行政裁判所で争われている。そこで、シュツットガルト行政裁判所の判決も、飛越上告され、デュッセルドルフの判決と一緒に扱われる可能性がある。

 つまり、「ディーゼル車の走行禁止の有無」を決めるのは、自動車メーカーによるソフトウェア交換の効果と、裁判所の判断である。ドイツがディーゼル車をまもることにはいろいろ議論があるが、決定が自動車メーカーの努力の実績と、裁判所の判決に握られている点は、「決定過程の公開」という点で高く評価していいのではないだろうか。もちろん、「遅すぎる」という批判はある、EUは、大気汚染が改善されないことに業を煮やし、2年ほど前から「罰金を科す」と脅しているそうだ。これを知ると、ミュルハイムが連邦道路1号線30キロの速度制限に取り組んだ背景も理解できることだろう。残念ながら、速度制限で汚染を低減できる箇所は限られており、大多数の道路では別の対策が必要なようである。

| アウトバーンや交通規制 | 14:24 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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年齢なきサイクリング:高齢者にも「風を髪で受ける権利」

 ドルトムントのニュースを眺めていて、「リクシャ」という、日本語起源と考えられる言葉があり、昔の「輪タク」(自転車タクシーの略で、戦後の一時期に活躍した)のような写真がある記事を見つけた。「都市交通に役立てようというのかな」と思い、とりあえずダウンロードしておいた。

「年齢なきサイクリング」のシンボルマーク
 数日後に読んでみると、都市交通として活用するという内容ではなく、むしろ自転車に乗られなくなった高齢者を連れだし、高齢者から昔の話しも聞くという、高齢者介護に関するプロジェクトの記事だとわかった。プロジェクトが始まったのはデンマークのようだが、すでに世界各地に広がりつつあるそうだ。ドイツでは、ベルリンやエッセンに取り組んでいる団体があり、ドルトムントでも検討が進んでいる、という記事だった。

 ユーチューブで調べると、デンマークでの首都コペンハーゲンにおける活動を紹介した映像を見つけることができた。英語で字幕がついているので、ドイツの映像よりわかりやすい。映像を見ると、プロジェクトが高齢者にも「風を髪で受ける権利」があると主張している意味も伝わってくる。この映像に出て来るコペンハーゲンは、自転車に優しい町のようだ。「コペンハーゲンの自転車改革の旅」という映像を見ると、日本と比較し、はるかに多くの自転車利用者がいることがわかる。デンマークには大きな自動車メーカーはないので、日本やドイツと比較して自転車の活用を受け入れやすい政治的風土もあると思われる。

 「輪タク」で思い出すのが、ベルリンで始まった自転車タクシーの「ベロタクシー」で、すでに日本各地で運航されている。この「年齢なきサイクリング」は趣旨がかなり違うプロジェクトで、現在の日本では「高齢者が事故の危険にさらされる」と敬遠されるかもしれない。だから、日本では「自転車に優しいまちづくり」を進めることが前提になるかもしれないな、と感じた。

| 自転車や歩道・舗装 | 14:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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産業廃棄物の丘にそびえる"虎と亀"からのメッセージ

 デュイスブルク市南部には、ライン川そばにあった亜鉛精錬工場の跡地から出た有害物質で汚染された土を積み上げ、無害な土で覆った上で、緑化した丘がある。ここに、2010年の「欧州文化首都年」の一環として、芸術作品を置くことになった(2009年に選定され、2010年に建設を始め、2011年秋に完成した)。選ばれて設置されたのが、写真のような作品で、「タイガー&タートル」という名称がつけられている。私も、近くまで行く機会があったので、ジェットコースターに似た作品に登り、歩いてきた。素晴らしい眺めで、とても気持ちが良かった。

「タイガー&タートル」を西を流れるライン川方向から見た遠景と、すぐ下から撮影した近景。近くで見ると、ダイナミックで非常に力強い感じを受ける。(2012年撮影)
 先週、デュイスブルクの美術館で、作品の作者から、制作した意図の説明を聞く会が行われた。私はこれまで、作品につけられた名称が「虎と亀」を示すことは気づいていたが、意味は全く気にしていなかった。ところが、その記事によると、この名称が、製作意図を示すキーの役割を果たしていた。

 作品の作者は、アトリエで政治や社会の問いを取りあげ、「対立について議論し、強化する」のだそうである。この作品で取りあげられたのは、「速いと遅い」というコントラストである。恐らく、この形を見て、多くの人は「ジェットコースター」をイメージするだろう。しかし、作品のところへ来てみると、そこには階段があり、一段づつ登らねばならない。だから、「速いと遅い」の対立がこの作品になったという話しは、とても良く理解できる。

 名称として虎と亀が選ばれたのは、もちろんスピードがポイントである。しかし、それだけでなく、タイガーはターボ資本主義のシンボルで、滅びる恐れもあると説明された。一方、カメは中国で賢明さのシンボルで、敗れないことも意味するそうである。この作品は、汚染土を覆って緑化した丘に設置されることも考えて製作されたそうで、作者は寿命があると考えており、「永遠のランドマーク」とは思っていないそうである。名称をドイツ語でなく英語にした説明はなかったが、英語ならどちらも"T"で始まることが関係しているのかもしれない。

 もちろん、芸術作品は、作者が考えたことを越え、人々に訴えかけるものである。「速いと遅い」のコントラストは、私たちに何を語りかけるのだろうか。みなさんも、機会があればデュイスブルク市南部へ足を伸ばし、作品に登ってみることを勧めたい。なお、私が訪問したのはたまたま日曜日だったので登れたが、曜日によっては登れないそうなので、注意が必要である。

| 居住環境や緑・公害 | 12:42 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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