FC2ブログ

| PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

アウトバーンのライン架橋で過積載トラックの排除を開始

 日本から「よく整備されていて、(もともとは)無料」とうらやましがられるアウトバーンだが、実際にはいろいろ悩みがある。ドイツ最大の大都市圏であるルール地方を東西に走り、「ルールアウトバーン」とも呼ばれる「アウトバーン40号線」も、その代表格の一つだろう。日に10万台の車が利用し、渋滞することも多いので、「世界一長い駐車場」と皮肉られることもある。

アウトバーン40号線でライン川を渡る斜張橋。
(Wikimedia Commonsより)
 現在、このアウトバーン40号線で最も大きな難点は、デュイスブルク市にあるライン架橋である。老朽化が進み、数年前からは年に何回か通行が規制され、溶接し直されたりするようになっている。以前も説明したように、この橋はもともと1日3万台の交通量に対して計画されたものであり、現在ほど多くの大型トラックが通ることは考えていなかったので、このような状況になってしまったのも当然かもしれない。現在、フルスピードで新しい橋の計画が進められている。新橋は上下各4車線の8車線で計画され、連邦も優先して建設を進める意向であるが、まだ計画確定が完了していない。工事開始はその後になるので、当面は「今の橋に長生きをしてもらう」ことが重要である。

 延命策は、主に3つある。一つはこまめに転換し、ヒビなどを発見したら、直ちに通行を制限して補修することである。最近は少し落ち着いたようだが、2014~15年にはよく通行制限のニュースが流れ、「またか」と思っていたものだ。最近も、今年の夏休みに2週間ほど通行禁止になっている。対策の二番目がスピード制限だが、守ってもらうには取締りが欠かせない。こうしてまず2015年5月に東方向の車線に自動取締り機が設置された。当時は東方向は時速80キロ制限で、多数の車が反則金を求められたが、路面の整備が終了した半年ほど後には、西方向と同じ時速100キロにされた。

A40ライン架橋の手前に設置された重量計のある車線へと入るトラック。重量オーバーの場合は、赤信号がつき、遮断機が自動的に降りるようになっている。(Der Westen紙より)
 最後の延命策が、重量制限を確実に行うための重量計設置である。ケルン近くのアウトバーン1号線ではすでに行われていた対策だが、A40ライン架橋でもようやく工事か完成し、先月の11月9日朝から東方向で稼働し始めた。

 止められるのは、全重量が40トン、あるいは車軸あたりの負担が11.5トンを超えるトラックである。橋の手前でトラックを徐行させ、道路に設置した重量計で測定し、疑わしいトラックに対しては遮断機が降り、通過させない。同時に、そばの建物で監視している職員がトラックを駐車場に誘導し、そこで正式の測定を行う。この2回目の測定は、警察か連邦職員が行うので、監視作業にはかなりのスタップが必要で、経費もそれなりにかかる。

 こうして稼働から1ヶ月間に、過積載のトラック約2千台を発見し、橋の通行を止めた。なお、僅かのオーバーの場合は大目に見てもらえるが、そうでない場合は反則金も求められる:監視経費と比較すると、スズメの涙ほどの金額に過ぎないようだが。もちろん、反則金を免除された場合でも、過積載である以上、橋を渡るのは認められない。例外が、ばら積みなどで荷物が偏り、ある車軸の負担が大きくなっていた場合である。この場合は、積み荷の移動で許容範囲に収まれば、橋を渡ることが許される。

 新橋の完成までかなりかかる以上、費用はかかっても、とにかく「長持ち」してもらわねばならない。だから、西方向についても重量計の設置工事が進められているそうである。
スポンサーサイト

| アウトバーンや交通規制 | 22:01 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

エッセンにディーゼル走行禁止の判決 - アウトバーンも

 このブログで何回か紹介しているように、現在、ドイツではディーゼル車の排気ガスに含まれる窒素酸化物への対策として、「一定基準に満たないディーゼル車を走行禁止にするかどうか」が大きな問題となっている。環境関連NPOのドイツ環境援助の提訴により、連邦行政裁判所は、デュッセルドルフとシュツットガルトに関し、「現行法の下でも、ディーゼル車走行禁止を実施することはできる」という判断を示している。

水色で示された市内18地区とアウトバーン40号線につき、窒素酸化物を多く排出する車の走行禁止が命じられた。(FAZ紙より)
 この環境NPOは、連邦政府が公共交通の活用で窒素酸化物を削減する社会実験の対象としたエッセンについても、ディーゼル車走行禁止を求めて提訴していた。その裁判の一審判決が、この11月15日に示された。これまでの判決は、汚染が深刻な道路の一定区間を対象に、古いディーゼル車の走行禁止を命じるのが普通だった。しかし、エッセンへの判決は、右図の水色で示した市内18地区につき、面的に走行を禁止するように命じた。エッセン市は50地区で構成されているので、市内の約1/3が禁止の対象となるわけである。

 道路の一部区間だけでなく、ゾーン的に禁止が命じられた背景には、エッセン市側の反論にも関係があるかもしれない。これまでエッセン市は、ディーゼル車走行禁止を求めるNPOに対し、「幹線道路を走行禁止にしたら、対象車は裏道に迂回して排気ガスをまき散らし、かえって大気が汚染されてしまう」と反論し、走行禁止を防ごうとしていた。ゾーン的に禁止すればこの問題は避けられるわけなので、エッセン市側の作戦が、面的な禁止を招いた要素もあるのかもしれない。

 しかし、それより衝撃が大きかったのが、アウトバーン40号線も禁止の対象とされたことである。これまでも、粒子状物質PM10の汚染を低減するために、汚染が激しい地区に「環境ゾーン」が設定され、古い車の走行が禁止されていた。しかし、域内を物資が自由に移動することを目ざすEUの理念により、アウトバーンは規制対象から除外されていた。エッセンへの判決は、このアウトバーンも対象にするという、初の判断を示した。

 判決が求めた規制が、直ちに実施されるわけではない。判決によると、まず来年2019年の7月からユーロ4基準の車が、9月からはさらにユーロ5基準の車の走行が禁止され、最新の基準であるユーロ6に適合する車は対象から除外される。もちろん、これは一審の判決であり、被告のエッセン市や州が控訴の準備を進めているので、実際に規制が行われるのは、その判断が出された後になる。エッセンでは、連邦のモデル都市として公共交通による窒素酸化物対策の社会実験が行われることになっている。この社会実験が成果をあげたら走行禁止がなくなる可能性があるので、市は社会実験に全力をあげるものと予想される。だから、走行禁止の結論が出るまでには、もう少し期間が必要である。

| アウトバーンや交通規制 | 22:19 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

提訴が迫るオーバーハウゼンは窒素酸化物対策に躍起

 少し前から、オーバーハウゼンが窒素酸化物対策を躍起になって進めている。もちろん、それには理由がある。明日から11月だが、環境関連NPOのドイツ環境援助が、11月に入ると多くの都市に対して窒素酸化物対策としてディーゼル走行禁止を求めて提訴することを予定しており、その対象にオーバーハウゼンも含まれているとわかったからである。

 すでに紹介したように、NPOのドイツ環境援助は、デュッセルドルフとシュツットガルトに関し、連邦行政裁判所で「現行法の下でも、ディーゼル車走行禁止を実施することはできる」という判決を手に入れている。以前からディーゼル車走行禁止を考えていたドイツ北部の大都市ハンブルクは、すでに2つの道路でドイツ初のディーゼル車走行禁止を開始しているそうた。

ピンク色の道路がオーバーハウゼンと周辺のアウトバーン網で、赤色が2つのアウトバーンを南北に結ぶミュルハイマー通りである。
 よもやま通信都市で、排気ガスが最も問題になっているのは、窒素酸化物削減の社会実験を行う連邦モデル都市に選ばれたエッセンである。アウトバーンが縦横に通るオーバーハウゼンの市街地では、エッセンほど車が多い印象は受けない。しかし、一つ弱点がある。それが、東西に走る2本のアウトバーンを南北に結んでいるミュルハイマー通りである。アウトバーンを降りて市内に向かうため、あるいは南と北のアウトバーンを結ぶために、多くの車が走っている。ここに置かれている窒素酸化物測定機による年平均値は、このところ48μg前後である。許容値は40μgなので、2割のオーバーである。交通事故も多く、以前から対策が議論されており、すでにトラックが4時間の間、通行禁止とされている。

 ドイツ環境援助からの提訴に対し、現在考えられている対策の目玉は、このトラック走行禁止を4時間から24時間に拡大することである。数年前から話題となっているが、商工団体などの反対で、まだ実施されていない。それ以外の対策は、電気自動車の普及、公共交通と貸し自転車に力を入れる、自転車道の整備など、以前から行っているもので、さらにどの程度の効果が得られるか心もとない感じもする。

 トラック走行禁止にも、弱点が一つある。ミュルハイマー通り沿道に用事があるトラックは通行が許されているので、実施には効果的な監視体制が必要になることだ。オーバーハウゼンの警官は新しい州政府によって少し削られており、財政不足で市職員を削減しているオーバーハウゼン市にとり、この作業は容易ではない。自動監視機の利用が考えられているそうだが、十分な効果を見込めるか、不安もある。NPOによる裁判がどう進むのか、これからも紹介していきたい。

| アウトバーンや交通規制 | 20:41 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

バス停での事故をなくせ - ドイツでは注意や徐行の義務

 8月末に、横浜市で、停車中の市営バスの後ろにある横断歩道を横断中の小学5年生が、反対方向から来たワゴン車にはねられ死亡するという痛ましい事故が発生した。バス停は交差点の角にあり、横断歩道と5メートル程度しか離れていず、バスは交差する道路と横断歩道をまたいで停車していたそうである。バスで横断する生徒が死角となり、ワゴン車から見えなかったのではないかと考えられている。現地をグーグル地図で眺めたが、バス停の位置にも、複雑な交差点と横断歩道の関係にも、驚いた。たしかに「危険なバス停」である。その後、バス停や横断歩道を改善できないか、検討されているそうだ。

 ドイツでは、バス停脇の歩道に待合所が置かれるのが普通で、事故があった「三ツ沢南町停留所」のように、バス停を示す標識があるだけという例は少ない。しかし、歩道と待合所が整備されていても、バスを降りてすぐに反対側に横断する状況はやはり生じる。だから、日本と同じように、停車中のバスのために道路を横断する人が見えず、危うい状況が生まれることがある。

エッセン市の北部にあるこのバス停の標識板には、「とくに注意が必要なバス停」であることを示す「赤い三角形」が付けられている。標識板背後の歩道に見えるのは、バスを待つ客のための待合所である。(Der Westen紙より)
 ドイツの交通規則には、停車中のバスから降りて道路を横断する人を保護する規定がある。この規定は、全てのバス停を対象とするものと、とくに注意が必要なバス停を対象とするものの、2段階構成となっている。

 まず一般規定によると、バスがバス停に停まっている場合、車は対面方向を含み、注意して走行しなければならない。さらに、乗降客がいる場合、車は歩行速度で徐行しなければならない。私が車の免許をとるために交通規則を学んだのは40年以上前の話だが、日本にはバス停周囲での駐車を禁止する規定はあったが、注意や徐行に関する規則はなかった、と記憶している。

 次に、とくに注意が必要なバス停の場合である。「とくに注意が必要」とされるのは、近くに学校、保育所、高齢者施設などがあり、子どもや高齢者の乗降が多いバス停である。たとえば全市に1300箇所ほどのバス停があるエッセン市の場合、要注意と判断されているのは33箇所である。こう判断された停留所には、写真のように、標識板に「赤い三角形」が記されている。バスの運転手は、停留所に三角形を認めると、停車の少し前に警告灯を点滅し始める。点滅は停車中も継続し、発車の際に消される。そして、周囲をバスと同じ方向へ走っている車は、この「警告灯の点滅」を認めた場合、歩行速度で徐行し、バスを追い越してはならない。バスが停車したら追い越してもいいが、乗客に危険がないように歩行速度で徐行し、十分な間隔をとる必要がある。反対方向を走る車についても、同じく徐行の義務がある。

 警告灯点滅時における周囲の車の行動への規定は比較的新しいものだそうで、ドイツにも知らないドライバーがかなりいるらしい。だから、警察も啓発活動が必要だと認めている。ユーチューブには、警告灯点滅時の運転法を示す動画がアップされている。バスの警告灯が点滅し始めると、車のスピードが遅くなることがわかると思う。違反すると反則金70ユーロで、さらに点数も付くそうである。

 さて「三ツ沢南町停留所」だが、近くに高校があるが、そこには「翠嵐高校前」というバス停がある。だから、高校前バス停は「とくに注意が必要」な停留所になるだろうが、「三ツ沢南町停留所」は無理だろう。それでもドイツの一般規定では、バスがバス停に停まっている時は対面方向でも注意が必要で、乗降客がいたら歩行速度で徐行する義務がある。だから、運転手が交通規則を守っていたら、ドイツではこのような事故は起きないはずである。バス停や横断歩道の位置も問題だが、交通規則も検討してみる価値がある、と思う。

| アウトバーンや交通規制 | 14:54 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

アウトバーン橋下のトラックへの放火で交通に甚大な影響

 ドイツのニュースを何年もチェックしているが、うんざりするというか、「何とかならないのものか」と思うのが、放火や落書きのニュースである。社会への適応に問題がある若者などが行う犯罪で、誰も得をする者はなく、社会に損害がもたらされるのは、つらいことである。落書きはがまんできる人もいるかもしれないが、元に戻すにはかなり経費がかかる。そして放火では、貴重な財産が一瞬で失われるだけでなく、命に関わることもあり、火災跡は周囲にマイナスの影響を及ぼす。ドイツのニュースを見ていると、失火による火災は少なく、火災の大部分は放火である。「社会の病」、こう表現することができると思う。

火災現場では車が焼けただれ、橋からはロープが垂れ下がっている。(Der Westen紙より)
 そのような放火の中でも、4月16日の早朝にデュイスブルクのアウトバーン59号線のベルリーナ橋の下に駐車していたトラックへの放火ほど大きな影響を及ぼす例は、珍しい。橋の下に木材を積んで駐車していたトラックに放火された。もちろん、気づいた人が消防に連絡したが、消防が到着したときは、トラックに加え、隣の車も火に包まれていた。こうして、計5台の車が全焼し、他にも数台が損害を受けた。

 これだけでも数千万円の被害だが、問題は場所が「アウトバーンの橋下」であったことである。火災の熱で橋を構成している鉄とコンクリートが損傷した。まずは調査のために橋の通行が止められた。ドイツ、とくにルール地方ではアウトバーンが網の目のようなネットワークを構成しているが、通行できない車が周囲の一般道やアウトバーンへ迂回するため、影響は広域にわたっている。しかも、橋の修復には期間がかかる。火災の直撃を受け、「少なくとも1週間は閉鎖する」と発表されたたベルリーナ橋の北行き車線は、2週間後の現在も通行禁止のままである。予定では、あさっての5月1日から、速度制限の上で通行できることになっている。

 犯人がわかりにくい放火だが、この事件の場合は、目撃証言により、数日後に容疑者の兄弟が逮捕された。取り調べの結果、兄(29歳)が放火を自白し、弟(19歳)は釈放された。兄は刑務所から釈放されて出てきたばかりで、弟の住まいに世話になっていた。

 福島でも、20年近く前に何回か放火が続いたことがあったが、犯人は逮捕され、その後は問題は聞いていない。放火や落書きが少ないことは、日本の長所だと思う。ドイツも、私が1年を過ごした40年以上前は、落書きもほとんど見当たらず、日本とあまり変わらなかった。日本も、最近の海外からの旅行者増加などで落書きが増える気配もあるが、長所はこのまま維持したいものだと思う。

| アウトバーンや交通規制 | 23:36 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

ディーゼル車走行禁止は窒素酸化物対策の切り札になるか

 先月の後半に、窒素酸化物対策を巡り、大きな動きがあった。一つはこのブログでも伝えた、公共交通の無料化で窒素酸化物を削減することを目ざす動きである。連邦政府が打ち上げたこの動きは、現在、ほぼ止まっている。その大きな原因は、財源面にある。公共交通無料化のためには財源が必要になるが、無料化のアイデアを出した連邦政府は、この財源対策を示していないのである。

 そのような状況で、候補としてあげられた5都市の市長が、2月最後の週末にボンで話し合いを行った。そこで、次のような点がまとめられた。
  • バスと電車の無料走行は魅力的なアイデアだが、経費やインフラ面の準備が必要で、それほど迅速にはできない。
  • 当面は、実行可能な窒素酸化物対策に力を集中すべきで、3月中旬までに、考えられる対策の提案リストを連邦政府に示したい。
 つまり、公共交通の無料化は長期的な課題ではあるが、財源がなく、インフラも不十分なため当面は実施しない。それに代わり、各種の短期的な対策の組み合わせで事態を乗り切るための提案をまとめたい、ということである。

 この問題で世論が最も注目しているのが、「窒素酸化物対策として、ディーゼル車走行禁止もあるのか」という点である。現在のところ、連邦にはそのようなことを可能にする法的枠組みはない。しかし、それではEUが設定した環境基準をまもれないと、環境関連NPOが問題にし、ディーゼル車走行禁止を含めて大気浄化計画の強化が必要だと提訴した。下級審が環境団体の意見を認めたので、連邦行政裁判所に上告され、審理が行われていたものである。

 連邦行政裁判所は、デュッセルドルフとシュツットガルトからの上告に関し、先月の2月27日に「現行法の下でも、ディーゼル車走行禁止を実施することはできる」という判断を示した。もちろん、直ちに全都市で実施するというようなものではなく、それなりの必要性があり、相当な対策だと認められる場合に限られるので、実際に行われるのはかなり先になるだろう。窒素酸化物の汚染状況が最もひどい南ドイツのシュツットガルトや、都市州であるため敏速に動けるハンブルクなどが候補になるだろう。大気汚染については州が大きな権限を有しているので、都市だけの判断で動くことはない。

 ルール地方よもやま通信の都市で最も可能性が高いのは、汚染値から考えてエッセンである。しかし、公共交通無料化の候補ともなったそのエッセンは、ディーゼル車走行禁止に猛反発している。だから、近く市が提出することになっている対策リストには、ディーゼル車走行禁止は示されないと思われる。どのような対策が示され、実効性があるのか、今後はこの点が問題となるだろう。

| アウトバーンや交通規制 | 23:04 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

ディーゼル車は窒素酸化物による危機を乗り切れるか

 この2週間、ドイツでディーゼル車について大きなニュースが続いた。まず7月28日(金)に、南ドイツでタイムラー車の本社があるシュツットガルトの行政裁判所で、「ディーゼル車の走行禁止もあり得る」ことを認める判決が出された。裁判では、走行禁止があり得ることを予想できない時点でディーゼル車を購入したドライバーの権利と、窒素酸化物の汚染に苦しむ住民の健康保持の利害の軽重も問題とされたが、裁判官は明確に「健康保持」を優先させた。原告はドイツ環境援助という環境団体で、車の排気ガス汚染がひどく、EUが定める許容値を超えている16都市に対し、大気浄化計画の改訂を求めて提訴していた。

 このような窒素酸化物を巡る争いの背景にあるのが、2年弱前に発覚した、フォルクスワーゲン(VW)グループによる排ガス不正事件である。違法なソフトウェアを自動車に組み込み、排気ガス排出試験の時だけ十分な対策を行い、路上を走る際は窒素酸化物をはるかに多く排出していた、という事件である。事件の後、どのような対策が行われるのか関心を持っていたが、フォルクスワーゲンは逆に世界での販売台数を伸ばしていき、不思議に思って眺めていた。

 先週8月2日(水)には、この排ガス不正事件の後始末とも言える会合が、ベルリンで行われた。「ディーゼル・サミット」と名付けられ、連邦の担当大臣、関係州の首相、そして自動車メーカーの代表が参加した。そして、約500万台とも言われるディーゼル車のソフトウェアを無償で交換することで、窒素酸化物を減少させることが発表された。ソフトウェア交換につき、メーカーは「ディーゼル車の走行禁止より効果がある」と話しているそうだが、これには環境団体などが疑問を表明している。南ドイツ新聞によると、先のシュツットガルト行政裁判所判決は、大気浄化計画を策定する州に対し、「自動車業界が対処するということを信頼してはならない」、そして「走行禁止は、有害な窒素酸化物による高い負担を低減する最も効果的な手段である」と述べているそうである。

 問題は、今後どう進むのかである。これから、自動車メーカーはソフトウェア交換に力を入れることだろう。重要なのは、「その結果として都市の大気が実際に改善されるのか」である。もし年内に改善傾向が示されなかったら、裁判の判決を受け、来年は「ディーゼル車の走行禁止」へと踏み切る州が出てくるだろう。そうなれば、ルール地方も対象から逃れることはできない。実は、デュイスブルクの南に隣接する州都デュッセルドルフでは、すでに昨年9月に、行政裁判所が「ディーゼル車の走行禁止もあり得る」ことを認めた判決を出している。この訴訟は、現在、連邦行政裁判所で争われている。そこで、シュツットガルト行政裁判所の判決も、飛越上告され、デュッセルドルフの判決と一緒に扱われる可能性がある。

 つまり、「ディーゼル車の走行禁止の有無」を決めるのは、自動車メーカーによるソフトウェア交換の効果と、裁判所の判断である。ドイツがディーゼル車をまもることにはいろいろ議論があるが、決定が自動車メーカーの努力の実績と、裁判所の判決に握られている点は、「決定過程の公開」という点で高く評価していいのではないだろうか。もちろん、「遅すぎる」という批判はある、EUは、大気汚染が改善されないことに業を煮やし、2年ほど前から「罰金を科す」と脅しているそうだ。これを知ると、ミュルハイムが連邦道路1号線30キロの速度制限に取り組んだ背景も理解できることだろう。残念ながら、速度制限で汚染を低減できる箇所は限られており、大多数の道路では別の対策が必要なようである。

| アウトバーンや交通規制 | 14:24 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT | NEXT