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この橋を1ユーロで売ります

 ドイツでは、価値はあるが、所有すると維持管理費用の出費が必要なのの理由で購入したい者がいない場合などに、象徴的に「1ユーロで売る」というケースがある。今回、1ユーロでの販売が検討されたのは、鉄道の上を走る道路に架かる橋である。橋を所有しているメルス市(Moers市、メールス市とも書かれる)市議会の都市発展委員会が、先月の会議で、「隣接するデュイスブルク市と、この橋を1ユーロで売却する交渉を行う」と決定した。橋は老朽化しており、取り壊しにも費用がかかり、新橋建設に時間がかかるため、住民は暫定橋の建設を求めている。これまでの責任もあるので、メルス市はこれらに関し、「取り壊し費用は提供し、暫定橋も一部を負担する」。ただ、「新橋の建設からは手を引き、デュイスブルク市にお願いしたい」ということである。今回の提案の背景には、これまでの経過や、橋の位置が関係している。

東側からアン・デア・ケルベ橋を見る。6本のポールが車の侵入を止めている。自転車と歩行者は通行が許されており、右側に見える自転車も橋を通って来たところである。(2018年撮影)
 この橋は、もともと下を通るドイツ鉄道が1910年に建設し、所有していた。しかし、ドイツ鉄道の民営化に際し、財務上の理由で、メルス市に寄付を申し出て、1990年代中期に市に移管された。その後数年間は、何事もなく経過した。しかし、21世紀に入ると老朽化が問題として浮上し、何回も新聞に取り上げられてきている。

 2001年に、橋は「老朽化している」と判定され、車が走る車線が中央部の1車線だけに狭められ、大型トラックの走行が制限された。同時に、メルス市は、架け替えのため州補助金獲得を目指し、構想を作成して申請すると発表した。構想は2005年にまとめられ、メルス市は秋に補助を申請し、「工事は2007年に開始できる」と、楽観的な予想を発表した。州の補助率は80%で、残る20%につき、メルス市は、デュイスブルク市に半額を負担するよう求めて交渉すると表明した。なぜメルス市は、デュイスブルクに執拗にl負担を求めるのだろうか。その理由は、下の地図を見れば理解できる。

赤色が鉄道で、ピンク色がアン・デア・ケルベ橋。(Stdtplandienstの地図を基礎に一部を修正)

 確かに橋はメルス市のSchwachheim(シュバハハイム)地区にある。しかし、デュイスブルク市Rheinhausen(ラインハウゼン)区のTrompet(トロンペット)地区とRumeln(ルメルン)地区を結ぶ性格が強く、この橋を通る路線バスも、デュイスブルク市交通会社のバスだけである。

 その後も、橋の老朽化は進行した。当初は16トンまでのトラック走行が許容されていたが、2010年に12トンに下げられ、橋の入口に、大型トラックが走行しないように高さ3.2mの枠が設置された。ところが、無理に通ろうとするトラックに枠が何回も壊され、2014年には高さに加えて車幅を2mに制限することとなり、バスも通行できなくなった。これでは不便なので、応急修理による延命が実施され、2015年夏に再びバスやトラックが走られるようになった。延命工事は「5年は大丈夫」とされていたが、2017年7月に別の問題点が見つかり、今度は人と自転車しか通行できなくポールが立てられ、現在も続いている。

 この問題では、メルス市の無責任さがかなり目立つ。州に補助金を申請するとしながら、補助金がついたという報道は全くなく、どういう状況なのかがわからない。デュイスブルク市が半額負担を了承しないので決定できないという情報が流れたこともあるが、メルス市が真剣に対処している雰囲気は伝わって来ない。そして、「1ユーロ売却案」の登場である。市域の変更が検討されているという話もあり、これは橋を1ユーロで売却するより筋が通る。

 地図でわかるように、南側への迂回は湖の南を回るため大変で、北側へ迂回した場合は、住宅地を通過することとなり、住民から騒音などの苦情が出ている。もちろん、迂回しなければならない住民からも苦情が出ており、橋の入口で暫定橋を求める集会が行われたこともある。問題の背後には、インフラの老朽化と、ルール地方市町村の財政が厳しいという現実が横たわっており、簡単に解決しそうには感じられない。橋と迂回路の周辺に居住する住民のため、何とか解決を見出してほしいと希望したい。
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| アウトバーンや交通規制 | 22:59 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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アウトバーン橋下のトラックへの放火で交通に甚大な影響

 ドイツのニュースを何年もチェックしているが、うんざりするというか、「何とかならないのものか」と思うのが、放火や落書きのニュースである。社会への適応に問題がある若者などが行う犯罪で、誰も得をする者はなく、社会に損害がもたらされるのは、つらいことである。落書きはがまんできる人もいるかもしれないが、元に戻すにはかなり経費がかかる。そして放火では、貴重な財産が一瞬で失われるだけでなく、命に関わることもあり、火災跡は周囲にマイナスの影響を及ぼす。ドイツのニュースを見ていると、失火による火災は少なく、火災の大部分は放火である。「社会の病」、こう表現することができると思う。

火災現場では車が焼けただれ、橋からはロープが垂れ下がっている。(Der Westen紙より)
 そのような放火の中でも、4月16日の早朝にデュイスブルクのアウトバーン59号線のベルリーナ橋の下に駐車していたトラックへの放火ほど大きな影響を及ぼす例は、珍しい。橋の下に木材を積んで駐車していたトラックに放火された。もちろん、気づいた人が消防に連絡したが、消防が到着したときは、トラックに加え、隣の車も火に包まれていた。こうして、計5台の車が全焼し、他にも数台が損害を受けた。

 これだけでも数千万円の被害だが、問題は場所が「アウトバーンの橋下」であったことである。火災の熱で橋を構成している鉄とコンクリートが損傷した。まずは調査のために橋の通行が止められた。ドイツ、とくにルール地方ではアウトバーンが網の目のようなネットワークを構成しているが、通行できない車が周囲の一般道やアウトバーンへ迂回するため、影響は広域にわたっている。しかも、橋の修復には期間がかかる。火災の直撃を受け、「少なくとも1週間は閉鎖する」と発表されたたベルリーナ橋の北行き車線は、2週間後の現在も通行禁止のままである。予定では、あさっての5月1日から、速度制限の上で通行できることになっている。

 犯人がわかりにくい放火だが、この事件の場合は、目撃証言により、数日後に容疑者の兄弟が逮捕された。取り調べの結果、兄(29歳)が放火を自白し、弟(19歳)は釈放された。兄は刑務所から釈放されて出てきたばかりで、弟の住まいに世話になっていた。

 福島でも、20年近く前に何回か放火が続いたことがあったが、犯人は逮捕され、その後は問題は聞いていない。放火や落書きが少ないことは、日本の長所だと思う。ドイツも、私が1年を過ごした40年以上前は、落書きもほとんど見当たらず、日本とあまり変わらなかった。日本も、最近の海外からの旅行者増加などで落書きが増える気配もあるが、長所はこのまま維持したいものだと思う。

| アウトバーンや交通規制 | 23:36 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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ディーゼル車走行禁止は窒素酸化物対策の切り札になるか

 先月の後半に、窒素酸化物対策を巡り、大きな動きがあった。一つはこのブログでも伝えた、公共交通の無料化で窒素酸化物を削減することを目ざす動きである。連邦政府が打ち上げたこの動きは、現在、ほぼ止まっている。その大きな原因は、財源面にある。公共交通無料化のためには財源が必要になるが、無料化のアイデアを出した連邦政府は、この財源対策を示していないのである。

 そのような状況で、候補としてあげられた5都市の市長が、2月最後の週末にボンで話し合いを行った。そこで、次のような点がまとめられた。
  • バスと電車の無料走行は魅力的なアイデアだが、経費やインフラ面の準備が必要で、それほど迅速にはできない。
  • 当面は、実行可能な窒素酸化物対策に力を集中すべきで、3月中旬までに、考えられる対策の提案リストを連邦政府に示したい。
 つまり、公共交通の無料化は長期的な課題ではあるが、財源がなく、インフラも不十分なため当面は実施しない。それに代わり、各種の短期的な対策の組み合わせで事態を乗り切るための提案をまとめたい、ということである。

 この問題で世論が最も注目しているのが、「窒素酸化物対策として、ディーゼル車走行禁止もあるのか」という点である。現在のところ、連邦にはそのようなことを可能にする法的枠組みはない。しかし、それではEUが設定した環境基準をまもれないと、環境関連NPOが問題にし、ディーゼル車走行禁止を含めて大気浄化計画の強化が必要だと提訴した。下級審が環境団体の意見を認めたので、連邦行政裁判所に上告され、審理が行われていたものである。

 連邦行政裁判所は、デュッセルドルフとシュツットガルトからの上告に関し、先月の2月27日に「現行法の下でも、ディーゼル車走行禁止を実施することはできる」という判断を示した。もちろん、直ちに全都市で実施するというようなものではなく、それなりの必要性があり、相当な対策だと認められる場合に限られるので、実際に行われるのはかなり先になるだろう。窒素酸化物の汚染状況が最もひどい南ドイツのシュツットガルトや、都市州であるため敏速に動けるハンブルクなどが候補になるだろう。大気汚染については州が大きな権限を有しているので、都市だけの判断で動くことはない。

 ルール地方よもやま通信の都市で最も可能性が高いのは、汚染値から考えてエッセンである。しかし、公共交通無料化の候補ともなったそのエッセンは、ディーゼル車走行禁止に猛反発している。だから、近く市が提出することになっている対策リストには、ディーゼル車走行禁止は示されないと思われる。どのような対策が示され、実効性があるのか、今後はこの点が問題となるだろう。

| アウトバーンや交通規制 | 23:04 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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ディーゼル車は窒素酸化物による危機を乗り切れるか

 この2週間、ドイツでディーゼル車について大きなニュースが続いた。まず7月28日(金)に、南ドイツでタイムラー車の本社があるシュツットガルトの行政裁判所で、「ディーゼル車の走行禁止もあり得る」ことを認める判決が出された。裁判では、走行禁止があり得ることを予想できない時点でディーゼル車を購入したドライバーの権利と、窒素酸化物の汚染に苦しむ住民の健康保持の利害の軽重も問題とされたが、裁判官は明確に「健康保持」を優先させた。原告はドイツ環境援助という環境団体で、車の排気ガス汚染がひどく、EUが定める許容値を超えている16都市に対し、大気浄化計画の改訂を求めて提訴していた。

 このような窒素酸化物を巡る争いの背景にあるのが、2年弱前に発覚した、フォルクスワーゲン(VW)グループによる排ガス不正事件である。違法なソフトウェアを自動車に組み込み、排気ガス排出試験の時だけ十分な対策を行い、路上を走る際は窒素酸化物をはるかに多く排出していた、という事件である。事件の後、どのような対策が行われるのか関心を持っていたが、フォルクスワーゲンは逆に世界での販売台数を伸ばしていき、不思議に思って眺めていた。

 先週8月2日(水)には、この排ガス不正事件の後始末とも言える会合が、ベルリンで行われた。「ディーゼル・サミット」と名付けられ、連邦の担当大臣、関係州の首相、そして自動車メーカーの代表が参加した。そして、約500万台とも言われるディーゼル車のソフトウェアを無償で交換することで、窒素酸化物を減少させることが発表された。ソフトウェア交換につき、メーカーは「ディーゼル車の走行禁止より効果がある」と話しているそうだが、これには環境団体などが疑問を表明している。南ドイツ新聞によると、先のシュツットガルト行政裁判所判決は、大気浄化計画を策定する州に対し、「自動車業界が対処するということを信頼してはならない」、そして「走行禁止は、有害な窒素酸化物による高い負担を低減する最も効果的な手段である」と述べているそうである。

 問題は、今後どう進むのかである。これから、自動車メーカーはソフトウェア交換に力を入れることだろう。重要なのは、「その結果として都市の大気が実際に改善されるのか」である。もし年内に改善傾向が示されなかったら、裁判の判決を受け、来年は「ディーゼル車の走行禁止」へと踏み切る州が出てくるだろう。そうなれば、ルール地方も対象から逃れることはできない。実は、デュイスブルクの南に隣接する州都デュッセルドルフでは、すでに昨年9月に、行政裁判所が「ディーゼル車の走行禁止もあり得る」ことを認めた判決を出している。この訴訟は、現在、連邦行政裁判所で争われている。そこで、シュツットガルト行政裁判所の判決も、飛越上告され、デュッセルドルフの判決と一緒に扱われる可能性がある。

 つまり、「ディーゼル車の走行禁止の有無」を決めるのは、自動車メーカーによるソフトウェア交換の効果と、裁判所の判断である。ドイツがディーゼル車をまもることにはいろいろ議論があるが、決定が自動車メーカーの努力の実績と、裁判所の判決に握られている点は、「決定過程の公開」という点で高く評価していいのではないだろうか。もちろん、「遅すぎる」という批判はある、EUは、大気汚染が改善されないことに業を煮やし、2年ほど前から「罰金を科す」と脅しているそうだ。これを知ると、ミュルハイムが連邦道路1号線30キロの速度制限に取り組んだ背景も理解できることだろう。残念ながら、速度制限で汚染を低減できる箇所は限られており、大多数の道路では別の対策が必要なようである。

| アウトバーンや交通規制 | 14:24 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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連邦道路1号線で窒素酸化物削減のため30キロの速度制限

 「連邦道路1号線」、こう聞くと、日本の国道1号線に匹敵するドイツの国土幹線だと思うだろう。しかし、アウトバーンが国土幹線となっているドイツでは、少し事情が異なる。日本では、たとえば市街地を通っている国道4号線に対してバイパスを建設した場合、バイパスが国道4号線になり、国道は県道に格下げされる。一方、ドイツでは連邦道路1号線のバイパスとして建設されるのはアウトバーンで、もとの連邦道路は依然として連邦道路である。例外的に、もとの連邦道路を拡幅整備してアウトバーンに格上げすることもある。その場合、当該区間は連邦道路でなくなり、たとえばアウトバーン40号線になる。連邦道路を走っていると、いつのまにかアウトバーンに入っていることがあるのは、このためである。

    逆に、アウトバーン40号線でドルトムントに入ると、いつの間にか連邦道路1号線に変わる。そこには交通信号や平面交差点があり、一部では中央分離帯をLRTが走る。さらに、沿道に住宅が建つ区間には50キロの速度制限まである。この規制は住民が裁判で獲得したもので、行政は50キロ制限は行いたくなかった。ドイツでは住宅地内部には広く時速30キロ制限が見られるが、片道が3車線ある幹線道路で50キロ制限が行われているのは、かなり珍しい。

ゼルベック地区の連邦道路1号線に設置された時速30キロ制限の標識。長方形のプレートには、Luftreinhaltung(大気の維持)と書かれている。(Der Westen紙より)
 右の写真は、ミュルハイム西部、ゼルベック地区の連邦道路1号線である。片道1車線ずつしかないが、ミュルハイムから国土幹線であるアウトバーン3号線へとつながる重要な幹線道路で、多くの車が通行している。その連邦道路に、延長約1キロにわたって写真のように「時速30キロ制限」の標識が設置されている光景は、非常に珍しい。これは、ドルトムントのように住民が裁判で勝ち取ったものではない。窒素酸化物対策として昨年2016年の2月末から実施されているもので、一種の社会実験である。

 ドイツで「燃費が良い」と好まれているディーゼル車には、窒素酸化物の排出という難点がある。EU(欧州連合)は窒素酸化物に対して規制を定め、限度を上回る都市に対して強く対策を求めており、ルール地方に限らず、ドイツの大都市はこれに悩まされている。たとえばミュルハイムの東に隣接するエッセンは、このまま進むと古いディーゼル車の走行を禁止しなければならなくなるので、何とかしてそれを防ごうといろいろ対策を試みているが、うまく進んでいない。

 写真にあるミュルハイムのゼルベック地区でも、2012年から窒素酸化物の測定が始められた。EUの許容値は40μg/m3だが、ここは毎年のようにオーバーしていて、2014年も平均が43μg/m3になった。対策を検討した専門家は、ゼルベックでは信号による停止と発進が多く、北方向へ1%弱の上り坂になっていることも関係しており、30キロの速度制限を行えば改善される可能性が高いと報告した。この案に対し、住民からは「本当にこれで大丈夫なのか」と疑問が出され、市の交通委員会でも「時速30キロ制限に効果があるのか」と懐疑的な意見が出された。

 結局、EUから対策を強要される前に、「まず30キロの速度制限を試み、効果が見られない場合は大型トラックの規制を行う」という線でまとまった。試行から1年が経過し、2016年の平均は37μg/m3と許容値に収まった。行政として、これは予想以上の成果である。他の測定点との比較しても、2016年に明確に低減した地点は見られず、明らかに30キロ制限の効果だと判断された。

 こうして、ゼルベック地区の速度制限は、当面このまま継続されることに決まった。ただ、この成果はゼルベック地区の特殊な条件のおかげなので、他の基準オーバー地点でも速度制限が行われそうな気配は、今のところ見られない。

| アウトバーンや交通規制 | 17:26 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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大型トラック対策 - 車線減少で「三度目の正直」となるか

4車線のフリードリッヒ・エバート通り。2013年8月の月曜日朝8時半頃なので、トラックは全く見えない。
 デュイスブルクのライン川を渡ったラインハウゼン地区では、以前から住宅地をわがもの顔に走る大型トラックが問題とされていた。最も問題とされてきたのが、ラインハウゼン地区を南北に縦断する4車線の幹線道路の「フリードリッヒ・エバート通り」である。右の写真がその通りだが、トラックが1台も見えないのは、月曜日の朝早く撮影したためである。道路に沿って集合住宅が建っており、確かに大型トラックが通ると大変だろうと感じる。

 トラック公害への対策として、フリードリッヒ・エバート通りでは、近く車線が上下各1車線と半減されることになっている。京都市の四条通りでは、歩道を広げることを主目的に車線減少が行われたが、ラインハウゼン地区の場合は歩道幅員は変更せず、中央部を緊急車両が通れるようにするそうである。たしかに車線が減れば、トラックの通行も減るだろう。しかし、迂回によって周辺で公害がひどくなる可能性もある。しかし、ここではそれは余り心配されていない。その理由は、これまでにフリードリッヒ・エバート通りの負担を減らすために対策を行ってきたが、「運転手が依然としてフリードリッヒ・エバート通りを好んで走るため、効果がほとんどなかったので、今度こそ迂回させよう」、という対策だからである。そこで、これまでの経過を簡単に説明したい。

 ラインハウゼン地区の産業で非常に重要な存在が運送業の団地「ログポート」で、規模は265haあり、これまでに約5千人の新規職場が進出している。この用地は1993年に最後の溶鉱炉の火が落とされたクルップの製鉄所跡地で、デュイスブルク港湾会社が入手し、「ログポート」と名付け、運輸団地として開発した。実は、ここは日本とも関係がある、ここに初めて進出を決めたのがNYK社、つまり日本郵船だからである。港湾会社は、日本郵船の進出を知り、開発がうまく進みそうだと喜んだそうである。

 こうしてログポートは順調に発展した。ここには港と鉄道もあるが、近年の輸送の主役は大型トラックである。まだNYK社もない1996年に、フリードリッヒ・エバート通りを走るトラックは日に174台であったが、2005年には8倍強の1465台に増加した。こうして住民から交通公害への苦情が出され、対策が検討されるようになった。下の図のように、大半のトラックはアウトバーン40号線からログポートへ最短距離で向かおうとする。そうなると、多数のトラックがフリードリッヒ・エバート通りを通るのは、当然のことである。

ログポートと周辺道路。赤色の道路が沿道住民からの苦情が多い部分で、そのうち南北方向の道路がフリードリッヒ・エバート通りである。青色の道路が、対策として建設された2本のバイパスを示す。

 対策として考えられたのが、バイパスの建設である。アウトバーンとログポートを、住宅地を通過せずに結ぶルートとして南バイパスが考えられ、着工された。しかし、トラックにとってかなり迂回が必要とされ、とくにライン右岸からの利用は期待しにくいため、ログポートへ向かう交通の2/3しか利用しないと考えられた。そこで、残る1/3のため、ライン川を渡った地点からログポートへ直結する東パイパスも追加された。もちろん、東バイパスを北にアウトバーンまで川沿いに伸ばすという案も考えられる。しかし、多額の建設費用がかかることに加え、川沿いの貴重な自然を破壊する。環境団体の反対が強く、実現は無理だと考えられている。

 こうして、東バイパスは2008年、南バイパスは2009年に開通した。しかし、その後も多数のトラックがフリードリッヒ・エバート通りを走り、運転手の行動を変えることの困難さを示している。そこで、2010年に入ると、7.5トン以上のトラックはフリードリッヒ・エバート通りを通行禁止にする案が追求されるようになる。もちろん、通り沿いの施設に向かうトラックは規制されず、通行が認められる。

 規制開始後の調査で、たしかにトラックが少しは減少したが、それでも900台近い通行があることがわかった。違反が多いと推定されるが、それでも警察には取り締まる動きがない。背景には、取り締まりにあまり効果を期待できないことがある。違反しても罰金は15ユーロと低額で、フリードリッヒ・エバート通りにあるガソリンスタンドへ向かえば違反でなくなる、という事情もある。

 その後も、対策について様々な議論が行われ、2016年に、市議会がフリードリッヒ・エバート通りの一部で車線を減少させ、大型トラックへ圧力をかけて迂回させることを承認した。これには道路工事が必要で、近く開始する予定である。もちろん、車線を減少させれば交通が渋滞すると反対する市民もいるが、専門家は車が減少するので心配ないとしている。実は、バイパス建設でトラックが減少する、あるいは7.5トン以上のトラック禁止に効果があると予測したのも、専門家である。今度のフリードリッヒ・エバート通りの負担軽減のための車線減少では、専門家の予測が実現することを願っている。

| アウトバーンや交通規制 | 22:22 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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11月は渋滞の季節 - ルール地方のアウトバーンも

 11月も終わりが近づいてきたので、アウトバーンの渋滞も少し落ち着いてきているだろう。ドイツでは、「11月は渋滞月」とされている。アウトバーンの渋滞状況はラジオで1時間毎に放送されているが、先日の朝は、ルール地方を含むノルトライン・ヴェストファーレン州で、約400キロもの渋滞が報告されたそうだ。ノルトライン・ヴェストファーレン州の広さは九州より少し狭い3万4千平方キロで、そこを延長6千キロのアウトバーンが走る。だから、福岡から鹿児島まで直線で往復する距離に相当する400キロもの渋滞が発生するのは、大変なことである。

 なぜ11月なのかについては、2つの理由があげられている:どちらも気候に関係する。ひとつは、昼の明るい時間が短くなり、暗い時に通勤しなければならなくなることである。ドイツは、緯度が高い。日本の北端である宗谷岬は、ほぼ北緯45.5度だが、これはイタリア北部やフランス南部の緯度である。ドイツの南端はほぼ北緯47.3度なので、2度も北にある。そして、ルール地方の緯度は51~52度である。秋分の日(今年は9月22日)には日本もドイツも昼と夜が各12時間だが、その後に夜が長くなるスピードが、ドイツでは日本より速い。

 そこで、11月はじめの文化の日ころに相当する太陽位置(日赤緯-15度)で、昼の長さを計算してみた。日本の名古屋市や京都市に相当する北緯35度では10時間半程度だが、ルール地方の北緯51度半で計算すると9時間半程度になり、1時間も違う。北緯35度では、冬至(日赤緯-23.45度)でも昼が9時間40分程度はある。私が住んでいる福島で、ようやく冬至に9時間半程度なので、多くの日本人にとって、ドイツの11月はじめの昼の短さは「未経験の領域」になる。ちなみに、ルール地方では、冬至の昼は7時間半ほどしかない。その分、夏には昼が長くなるわけではあるが。

 さて、話しを渋滞に戻そう。11月に入ると、ドイツでは朝の暗いうちに自宅を出て会社へ向かい、帰宅も暗い時になるわけだ。暗い時の通勤は「慣れ」の問題だろうが、11月は「まだ慣れていない」ため渋滞が起きる、というわけである。

 11月が渋滞月であるもう一つの理由は、通勤手段の変化だそうである。近年、地球温暖化への対策や健康のため、整備が進んできた自転車道を利用する通勤が少しずつ増えている。「夏も冬も自転車」という人もいるが、寒さが厳しい冬は他の交通手段、たとえば車に転換する者もいるそうで、これが交通量を増やし、渋滞の原因になっていると考えられている。

 自転車は環境に優しく、健康にもいい通勤手段だが、雨に弱く、暑い季節は汗だくになり、寒く暗い季節は敬遠される。なお、自転車通勤の普及のため、最近は汗を流すシャワーを設置する企業も増えているそうである。

| アウトバーンや交通規制 | 16:24 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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