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ハンネローレ・クラフト下の市財政 - アメとムチで赤字削減

 先週のノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙につき、日本では「財政再建が争点で、教育・福祉への積極支出を訴える社会民主党(SPD)に対し、キリスト教民主同盟(CDU)はメルケル首相の緊縮策を主張した」と報道されている。たしかにそれは事実なのだろうが、事実は他にもある。

 2005年に誕生したリュットガース(CDU)州政府の政策で財政赤字がさらに拡大し、苦しんできたルール地方の都市が、2010年のクラフト(SPD)州政府の登場に救いを見出し、現在、財政赤字削減の緊縮策に全力で取り組んでいることも、事実である。これを知れば、今回の州議会選挙への印象が変化するのではないだろうか。州憲法裁判所が「州憲法に反する」という判決を下した2つの事件から判断し、旧リュットガース政権は、州財政改善のために、強引に市町村に支出を肩代わりさせようとしていたようだ。

 1件目は、17市と2郡が原告となって争った保育所に関する2010年10月12日の判決である。問題となったのは、3歳未満児に関して保育を行う義務を郡と大規模な市に新たに課した州の法律である。州憲法は、新たに公的な義務を自治体に課す場合は、同時に費用についても配慮し、バランスをとるように義務づけている。この配慮が欠けていた点が、自治の権利を侵害したとされた。判決時にすでに登場していたSPDと緑の党のクラフト州政府は、直ちに保育所整備のための補正予算を作成する等、対応に努めている。

 もうひとつは、旧東ドイツへの連帯資金に関する紛争である。原告は91の自治体で、州議会選挙直前の2012年5月8日に判決が下された。旧東ドイツ再建のため、一定以上の所得のある人が連帯税を納税していることに加え、旧西ドイツの州からも「連帯パッケージ」として資金が東側の州に提供されている。旧リュットガース政権は、州と自治体の分担を定めた法律を2006年に改正し、全体の負担額を推定した上で(実際の負担額ではないそうだ)、その40%を自治体に負担させることにした。この改正が、財政調整に関して連邦の憲法が定めている原則に適合せず、自治の権利を侵害していると判断された。

 このように、州財政改善のため、なりふり構わずに自治体に負担を押しつけていた旧リュットガース政権の下で、ルール地方を始めとする市町村では負債が膨らんでいった。対策には、州の主導権が欠かせない。そこで、2010年に誕生したクラフト州政府は、翌2011年に、財政が破綻した自治体と「強化協定」を結び、州が期間を限定して特別な補助金を提供する代わりに、2016年までに赤字予算から脱却することを義務付けた。対象となる都市は、当初は州が指定した34で、オーバーハウゼンとデュイスブルクなど、ルール地方の人口減少都市が多く含まれている。

 昨年末に、34都市中で2番目に多い6千600万ユーロの州補助金を受け取ったオーバーハウゼンでは、市長や収入役が「負債づけから脱却するチャンス」と、州の動きを歓迎している。現在、市の年間予算は約7億1千万ユーロで、1億4千万ユーロの収入が不足している。今年度は4千万ユーロの赤字削減が義務づけられており、先週の5月15日に213項目の案が公表された。内容は、職員の削減、プールや図書館の閉鎖、学校の閉鎖、劇場への補助金削減、地価税の増税、宿泊税の導入など、重いものだ。現在はインターネットを通じて市民の意見を聴いているところで、初日に23のコメントが書き込まれた。「補助金」を提供することでバランスした予算を義務づけた、まさに「アメとムチの政策」である。この「ムチ」の痛みに、オーバーハウゼンは耐えられるのだろうか:5年ほど前に始まった夕張市の財政再建を思わせる。実は、オーバーハウゼンは人口1人当たりの負債額がドイツで最も多く、州からの補助金も、1人当たりでは最も多額になっている。

 今回の州議会選挙で、ハンネローレ・クラフトは、「この20ヶ月に州の状況は確実に良くなってきており、これを継続しよう」と訴えた。だから、選挙戦には、「メルケルの緊縮策か、クラフトの積極支出か」だけでなく、「リュットガースの自治体しわ寄せか、クラフトのアメとムチの政策か」という観点もあったのである。
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| 市財政や税金問題 | 10:30 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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「メルケル与党、過去最悪の大敗」、でも議席は同数

 今週に入り、ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙で州首相ハンネローレ・クラフトが率いるドイツ社会民主党(SPD)が勝利したことが紙面を賑わせている。一方、ドイツの国政を率いるメルケル政権の与党であるキリスト教民主同盟(CDU)が大敗し、戦後最低の得票率しか獲得できなかった。「では議席数は」と調べると、不思議なことに、CDUの議席数は前回と同じ67である。

 不思議なことがもう一つある。それは、前回の選挙では総議席数が181だったのに、今回は56も増加し、237になっている。増加が極端なので、ドイツでも不思議に思っている人がいるようで、説明している記事をみつけた。計算してみると、確かにCDUは67議席になる。日本と同じ「小選挙区と比例を組み合わせる方式」だが、「組み合わせて出てくる結果が逆になる」ことに驚いた。そこで、説明を試みたい。

 州議会選挙で、有権者は2票を有す。1票目は自分が属する選挙区から1人を選び、2票目は支持する政党を選ぶ。選挙区は計128あり、州議会の定数は一応181となっている。まず1票目で、小選挙区で得票が最も多かった候補が選ばれる。今回は、SPDがここで99議席を獲得し、CDUは残る29議席しか得られなかった。ところが、SPDの99議席は「獲得しすぎ」なのだそうだ。SPDは、2票目の39.1%しか獲得していないからである。得票が5%を超えた5党の2票目を全て合計すると93.1%になる。SPDは、この2票目の比率をもとに計算して、181×39.1/93.1の76議席しか権利がなかったのだそうだ。76の権利で99の議席を獲得したのだから、残る4党にも同じ比率で議席を配分しないと、州民の意思が州議会に反映されない、ということらしい。

 得票率が26.3%だったCDUの議席は、39.1%で99議席を獲得したSPDをもとに、次のようにして計算される。
  99/39.1×26.3=66.6
こうして、得票率が34.6%だった前回選挙と同じ67議席になるように、比例で38議席が配分される。もちろん、大勝したSPDには、比例の配分はない。

 日本の衆議院選挙では、小選挙区ほどではないが、比例でも大政党が多くを獲得し、小政党との議席数はさらに拡大する。ひと言で「小選挙区と比例」と言うが、全く逆方向の配分が存在することに驚いた。

 もちろん、ドイツの方法には欠点がある。今回、議員の数が多くなったため、議会の費用が年1200万ユーロほど多くかかるそうだ。財政が厳しいノルトライン・ヴェストファーレン州には、重い負担である。

 なお、SPDを勝利に導いたハンネローレ・クラフトは、ミュルハイムの出身である。ミュルハイムでは高齢化が非常に進んでおり、彼女が通った市北部の140年の伝統を有する小学校も、生徒不足で昨年度から新入生の受け入れを停止しており、3年後には閉校になる。

| ドイツと日本と | 10:19 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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ベビーカーや手押し車によるバス乗車トラブル

 ドイツで生活した時に「日本と違う」と感じたことのひとつに、ベビーカーに子どもを乗せた女性が、バスや電車に乗り込む姿がある。周囲にいる人は、ベビーカーを持ちあげ、積極的に乗降に協力する。日本人にはなかなかできない、ほほえましい光景である。

 高齢化の影響で、最近は、高齢者が手押し車(歩行器)を使用して町を歩いている姿も多く見られる。これらの高齢者も、バスや電車が頼りである。ベビーカーに手押し車も加わった結果、乗客が多い時には乗降が大変になっている。最近、バス乗車に関するトラブルが新聞に取りあげられる背景には、このような事情がある。2ヶ月前には、ドルトムントの高齢者の手押し車をめぐるトラブルが、少し前にはボーフムのベビーカーをめぐるトラブルが、新聞で報道された。

 ボーフムの場合は、ベビーカーで都心から帰ろうとした女性が、乗車を断られた。彼女の直前にもベビーカーで乗り込んだ女性がいた上、事前にベビーカーの女性が乗っており、彼女は3台目だった。しかも、バス中央部の広い場所にある優先座席2つには、高齢の女性が座っていた。周囲の乗客が、高齢の女性に席を移ってもらおうとしたが、うまくいかなかったようだ。

 時刻は夕方5時半で、彼女は「子どもがとてもむずがっているので、急いで帰宅しなければならない。私は降りない」と主張した。それに対し、運転手もバスを管理する権利を主張し、大声でどなったそうだ。やむなく乗車をあきらめた女性は、涙声で新聞社に電話で事情を訴えた。

 バス会社は、新聞社に対し、「何台のベビーカーを乗せられるか、危険だと断るかは、運転手の裁量にある」と、運転手の正当性を認めた上で、言葉が粗雑であった場合について謝罪した。たしかに、バスに多くのベビーカーを乗せて運行するのは危険だという運転手の判断は、尊重されねばならないだろう。

 このようなトラブルは、「残念ながら」日本では起きないだろう、日本のバスは通路が狭く、乗降が大変で、ベビーカーや手押し車で乗降する乗客を見たことがないからである。日本の高齢者は、杖を使う練習が必要なようだ。なお、女性が乗ろうとしたバスの時刻表を調べたところ、彼女の乗車予定時間は9分間で、次のバスは30分後とわかった。「30分に1本」は、23時台まで継続する。ドイツではとくに珍しいことではないが、暗い時刻にはバスがほとんどなくなる町に住んでいる私から見ると、充実した公共交通が羨ましい・・・。

| 公共交通 | 12:35 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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ルール自転車高速道路は西高東低

 ルール地方を東西に結ぶ自転車高速道路、その後の状況は西高東低である。ドルトムントで心配されているのは、費用だけではない。中心部では既存の道路を活用する部分があり、駐車帯がなくなって車を停められなくなるので、住民の反発が大きくならざるを得ず、「緑の党」以外の政党は及び腰である。

2009年秋の市長選挙におけるジーラウのポスター
 こうして、ドルトムントのジーラウ市長も、自会派であるSPD(ドイツ社会民主党)議員との会議の後、「ルール自転車高速道路の調整はほぼ無理で、その他の自転車道プロジェクトの方が優先される」と発表せざるを得なくなった。ジーラウ市長は、もともと自転車利用を推進する政策を支持しており、市長選挙のポスターにも、右のように家族みんなで自転車に乗った写真が使用されていた。

 その一方で、旧ライン鉄道のルートを使用できるエッセン都心部からデュイスブルクのライン川までの区間は、ドルトムントを横目に、着々と進行しつつある。2015年までの完成を目ざし、欧州連合と州に補助金の申請が進められている。うまく進めば、工事費用の8割が補助されるそうだ。

 ドルトムント市長の発言を心配して、先週、ドルトムントに高速自転車道路の関係市長が集まり、会議が行われた。会議の終了後、ジーラウ市長は「自転車を基本的に支持し、高速自転車道の実現性検討を行う意思表明にもサインをした」と発表している。大きいプロジェクトが実現するまでには、紆余曲折がつきものだ。期間は当初計画より長くかかるだろうが、いずれはルール自転車高速道路が完成するだろうと期待したい。

| 自転車や歩道・舗装 | 14:57 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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