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ルール地方が貯蓄銀行アカデミーの誘致合戦へ

 私が観察しているルール地方6都市は、互いに協力することが多いが、時には対立もする。そして、現在は後者、つまり「対立」についての話題が新聞をにぎわせている。その対立とは、州の貯蓄銀行アカデミーの誘致合戦である。ルール地方だけでなく、州全体で100箇所前後が貯蓄銀行アカデミーに立候補し、ひとつの対象を奪い合っている。

 ドイツの貯蓄銀行は、日本の郵便貯金のように、庶民の金融機関として親しまれている。組織は市町村毎だが、州で連合体が形成されている。連合は所員の企業内教育も担当しており、現在は州の東と西にアカデミーがあり、分かれて行われている。誘致合戦の発端は、「州の2箇所にあるアカデミーを1ヶ所に統合する」、という決定である。アカデミーの規模は延べ面積約7千平方メートルで、教育を受けるために年間約4万3千人がやって来る。教育などにあたるアカデミーのスタッフ約80人に加え、様々な関連サービス、ホテル、飲食店など、幅広い影響を及ぼすことが期待される。

ドルトムントから応募が行われたフェニックス湖畔に建つヘルダー城。(2012年撮影)
 応募締切は8月1日で、州内各地から100箇所前後の応募があったそうである。ルール地方は、州の中央部に近いので、応募の誘因が大きい。そして、よもやま通信6都市では、ボーフムを除く5都市から応募があった。なかでもミュルハイムからは、市が中心となった2箇所に、空きデパートを加えた計3箇所が応募している。

 応募した資料は、貯蓄銀行連合に依頼を受けた建築事務所が、16の観点から評価し、そのリストを貯蓄銀行側に提出する。貯蓄銀行連合がそのリストをもとに審査を行い、年内に決定される予定である。報道によると、その観点に含まれるポイントとして、交通の便(公共交通とアウトバーン)、ホテルの便、立地場所の魅力、駐車場、拡張可能性などがあげられている。評価を行う設計事務所長は、「客観的に助言する」と述べている。

 応募が報道された5都市の7箇所はいずれも知っている場所で、土地勘がある。そこで、私の独断と偏見で優劣を比較してみることとした。

都市応募地交通の便その他の特徴
デュイス
 ブルク
中央駅の南に隣接する貨物駅跡地中央駅の南約200mで、公共交通の便は極めて良く、アウトバーンのインターチェンジもすぐそばにある。貨物駅跡地であるため、まだ周辺が整備されていず、現時点では殺風景で見劣りがする。
オーバー
ハウゼン
郊外ショッピングセンター「ツェントロ」そばにあるマリーナ隣接地アウトバーンのインターチェンジはすぐ近くにあるが、中央駅から約3km離れ、LRTかバスに乗り換えるのが難点である。そばにショッピングセンター、遊園地や水族館、レジャープールがあるが、アカデミーにふさわしい環境はあまり感じられない。
ミュル
 ハイム
都心デパート跡のビル中央駅から商店街を経由して約500mで、アウトバーンからは約3キロある。旧デパートなので、周辺環境に潤いが少ない。アカデミーが利用する以外の部分には、ホテルや食料品店を誘致する予定である。
ルール河畔に開発中のルールバニア予定地旧デパートの200mほど北にあり、条件はほぼ同じである。川に面するので、旧デパートより直近の環境が恵まれている。
ルール川西側にある市民大学の用地中央駅からは約1キロ、アウトバーンからは約3キロある。周囲が公園で、南側には歴史あるブロイヒ城もあり、環境に恵まれている。
エッセン都心の市民大学跡地中央駅から約400mで、都心環状線沿いにあり、アウトバーンのインターチェンジも1キロ以内にある。すぐ近くに図書館や職業教育を行う民間大学があり、市は生涯教育の場に適切だと判断している。そばに緑が少ないのが難点である。
ドルト
 ムント
完成して間もないフェニックス湖の湖畔に建つヘルダー城中央駅から4キロほど離れているが、地下鉄で結ばれている。約1キロ北側には、アウトバーンに直結している連邦道路1号線が走る。12世紀に建築された貴族の館で、19世紀に鉄鋼工場が購入した。その工場が取り壊され、跡地に人工湖が完成し、状況が一変した。建物は一部しか利用されていず、活用が模索されている。

 評に◎をつけたエッセンの市民大学跡と、ドルトムントのヘルダー城は、選ばれてもおかしくないと考えている。エッセンの場合は都心なのでホテルも多彩で、いろいろ選定できる。ヘルデ城は駅から離れているのでホテルの便は良くないが、地下鉄を使って都心に出て行けば、エッセン都心と同じく多彩なホテルを選べる。デュイスブルクの場合は、あと5~10年後には良い場所になっているだろうが、現時点では見劣りがする。オーバーハウゼンとミュルハイムについては、ドイツ版新幹線であるICEが中央駅に停車しない点もマイナスと判断される。

 私が期待しているのは、ドルトムントのヘルダー城である。州にはいろんな都市があるので、エッセンの市民大学跡と似た用地が出て来る可能性はある。しかし、上に示した写真からもわかるように、周辺環境や歴史性の点で、人工湖フェニックス湖に面したヘルダー城に対抗できる応募案は、まず現れないだろう。問題は、貯蓄銀行が、デュイスブルクやエッセンのような「都心内の便利さ」を求めるのか、それとも、都心から少し離れても水や緑に恵まれた環境を志向するのか、という点にあるだろう。後者の場合は、ヘルダー城が選ばれる可能性が大きい。

 なお、以上の5都市7箇所だけだろうと思っていたら、今朝になり、ボーフムからも3箇所の応募が行われていたことが分かった。いずれも民間が独自の観点から提出したもので、「都心が2箇所、郊外が1ヶ所」以上のことは明らかにされていない。短期間にこれほどの応募が集まったことが、ルール地方の置かれた「資本を投資しようとする者が少なすぎる」という状況を示しているように思う。私が観察しているルール地方6都市の可能性を信じ、決定の行方を見まもりたい。
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