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ドイツでも土地収用は「抜かずの宝刀」か - エッセンの場合

 まちづくりでは、「特定の土地」が必要になる場合が出てくる。うまく売買の話しがまとまればいいが、所有者が「売らない」と拒否した場合、最後の手段となるのが「土地収用」で、補償金を払って私有地を強制的に取得することが可能となる。厳しい手法なので反発も強く、一般に「最後の手段」とされており、可能な限り任意交渉で土地の入手を行おうとされるのが普通である。収用は手続きが煩雑で時間もかかり、確かに避けたい気持ちもわかる。

ピンク色が既存のアウトバーンを、赤色が52号線を示す。点線は、計画中の路線を示す。
 これまで、ルール地方を15年近く眺めてきたが、この「土地収用」にはまだ1度も出会ったことがない。しかし、1年ほど前に、エッセンで土地収用への動きが出てきた。「ドイツの土地収用はどのように進むのだろうか」と、関心を持って見ていたら、先月になって両者が突然歩み寄り、収用の可能性が消えた。問題となったのは、アウトバーンのインターチェンジを移設する工事のための用地取得である。そこで、移設の背景から説明していきたい。

 右上が、以前、グラートベックの住民投票の記事で示した、エッセンと周辺のアウトバーン網である。エッセンの中央部をA40が東西方向に通り、そこに南西からA52が合流している。A52は、エッセンを南北に通過する路線として計画されたものだが、すでに説明したように、未着工部分の完成が断念される可能性もあり、もっぱらA40から分岐するアウトバーンとして使用されている。この結果、A40とA52の合流部分では交通量が多く、渋滞が生じることも少なくない。

A52とA40の合流部分とインターチェンジの関係。(Googleの地図に説明を書き込んでいる)
 左が、合流部分とインターチェンジの関係で、問題が2つある。ひとつは、A40とA52をつなぐ部分が1車線しかなく、渋滞の原因となっていることである。もう一つが、A40とA52の分岐部(合流部)からインターチェンジまでの距離がわずか400m程度と短く、A40とA52へ向かう(から来る)車で交通が錯綜し、事故多発区間となっていることである。A52とA40の結合部分を2車線にすると、さらに車が錯綜して事故が増加する恐れがあるので、「インターチェンジの東側への移設」が強く求められた。

 ここはエッセン都心に近く、多くの建物があるが、インターチェンジの候補地は見つかった。アウトバーン南側(ボーフム方向の車線)はアウトバーンそばの緑地に、北側(ミュルハイム方向の車線)は炭鉱跡地に新設する。用地取得が問題となったのは、北側のインターチェンジである。この用地を所有しているのはTÜVという会社で、交渉の結果、公示価格の5割増しで買収することで話しがついていた。ところが、契約が近づいてくると、TÜVは新たな要求を提示し、要求が認められない限り土地を売却しないという態度に転じた。報道によると、旧炭坑施設による土壌汚染の恐れが背景にあり、TÜVは、汚染が発見された場合の危険負担を、全て市が背負うように要求したようだ。これは、公害に関して国際的に認められている「汚染者負担の原則」に反しており、市としても妥協はできない。

 2013年の末に、エッセン市議会都市計画委員会は、秘密会でこれまでの交渉経過に関する説明を詳しく受けた後、州に用地の収用を行うように依頼した。インターチェンジの建設には連邦からの補助金が使用されるが、その資金は2018年までしか確保されていない。収用には期間がかかるので、そろそろ手をつけないと補助金が消えてしまう恐れもあった。

 収用の動きに対し、TÜVは意外な反応を示した。2014年1月に、「これまでの市の動きが、脅迫やゆすり、あるいは悪意の中傷や誹謗にあた可能性を弁護士に検討させており、場合によっては検察に告発を行う」と発表したのである。その後、この問題に関する報道はピタッと止まり、2014年10月になって、市とTÜVが和解し、条件を詰めて用地が売却されるという報道が流れた。

 詳しい中味まではわからないが、市も少しは譲歩したようで、事前のボーリングを細かく行い、TÜVがリスクに対処しやすいように配慮するそうである。しかし、全体的には、TÜVが方向転換したことが明らかである。収用を求めた市議会都市計画委員会のメンバーを名誉毀損で訴えても、裁判で勝つのは無理であろう。逆に、市とTÜVの交渉経過が広く知れわたり、ますます分が悪くなる気がする。

 さて、アウトバーン利用者が首を長くして待っているインターチェンジの移設だが、南側は完成し、11月15日に利用が開始された。北側はこれから条件を詰めて用地を購入した後に工事開始となるわけで、完成はかなり遅れそうであるが、収用が消えた分だけは早くなるであろう。
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| アウトバーンや交通規制 | 11:29 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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アンペルマンを男女同数に - 歩行者信号の形いろいろ

 ドルトムントの都心西区の区評議会で、歩行者用の信号を男女半々にする検討を求める提案が認められ、これから歩行者用信号が変化しそうな感じである。「信号の男女」と聞いても、何のことかわからない人が多いだろうが、ドイツ、とくに旧東ドイツを訪問すると、右下のような歩行者用信号を見かけることがある。これがアンペルマン、つまり「信号の人」である。モデルは男の子なので、小さいことを表す「ヘン」を語尾につけて「アンペルメンヘン」と、女性版のアンペルフラウは少女なので「アンペルメッチェン(アンペルメトゥヘン)」と呼んだりもする。

上がアンペルマン、下がその女性版のアンペルフラウによる赤信号と青信号。
 この信号を考えたのは、東ドイツの交通心理学者カール・ペグラウで、1961年のことだそうである。その有効性が認められ、ドイツ統合前の東ドイツで普及が進んだ。東西ドイツの統合で消えるはずだったが、可愛い信号に愛着を感じる人々が運動した結果、この信号を使用し続けられることになったそうだ。そして、2004年になり、女性版の信号も登場した。しかし、少女の信号はまだ数が少なく、私も見たことがない。

 信号の形は、単なる「好み」の問題かもしれない。しかし、日本でも見られる大人の男性の形に比較して「変化が大きい」ので、実際に効果があるかもしれない。こう考えて比較検討したブレーメン大学の教授によると、アンペルマンの方が視認性が良く、信号を間違えたりする率が低かったそうだ。たしかに赤信号は両手を広げて「通せんぼ」をしている形だし、青信号には動きが感じられる。

 さて、ドルトムント都心西区の歩行者用信号に「アンペルフラウ」を採用するように検討を求めたSPD(ドイツ社会民主党)と緑の党は、提案の根拠として2つの理由をあげた。ひとつは男女平等であり、「信号の半数をアンペルフラウにする」ことを目ざしている。もうひとつは、「スカートの影響で光る部分が広いので、より目立つ」ことである。たしかにそうかも知れない。

 信号の「色」と「形」の効果を研究すると、面白いかもしれない。アンペルマンは歩行者用信号だが、車の信号は、旧東ドイツでも丸い形しか見たことがない。いっそ、車の信号も形を変えたら、信号無視や勘違いが減り、事故が減少するのではないだろうか。たとえば赤信号は に、黄色は にする社会実験を行い、効果を試すことを提案したい。

| 自転車や歩道・舗装 | 17:04 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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