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駅前のプラタナスが伐採される - 住民投票は間に合わず

 デュイスブルク中央駅のすぐ前には、アウトバーン59号線が通り、その向こうの道路には樹齢が60年を超えた大きなプラタナスが30本近くある。数年前に、アウトバーン59号線に、長さ約150mについてコンクリートの蓋が追加され、その上部が市民の広場に転換されることになった。完成したのは2010年で、それから4年以上が経過するが、まだコンクリート板(スラブ)のままで、整備が進んでいない。この原因は市の財政難だが、州から補助を獲得できたので、いずれ市民の憩いの場になるだろう。

 新しい広場の町側には、片道2車線で、広い中央分離帯を有した道路がある。この中央分離帯は、かつて路面電車が走っていた跡で、地下鉄の完成後は駐車場として利用されていた。財政が厳しい市は、駅前広場を整備する機会に、この道路を片側1車線に狭め、中央分離帯が占めていた面積と一緒に駅前側にまとめ、そこに店舗兼オフィスを建設しようと考えた。都心の活性化と、市財政への貢献という、一石二鳥を狙った案である。

警官にまもられて進む伐採作業。幹に巻かれた緑色の布は、反対派によるもの。(Der Westen紙より)
 駅前道路の歩道と、旧電車軌道の両側には、プラタナスが大きく育っていた。道路を狭めて5階建ての建物を建設する案がまとまった後の2013年6月になり、自然保護グループが中心となって「駅前のプラタナス32本を伐採からまもろう」という動きが始まった。2週間で2千数百の伐採反対署名が集められ、署名を受け取った市長は「対話」の実施を約束した。そして、議論を行うまでは伐採を行わないように指示した。

 その後、駅前整備に合わせて道路を整備するには、伐採が欠かせないと分かったようだ。市は説明会を行ったが、住民との意見の違いは埋められず、住民は住民投票を目ざす署名活動(住民請求)を準備し始めた。10月に入り、市は、代替植樹に加え、周辺に植樹を追加する妥協案を示したが、受け入れられなかった。ところが、意外な理由で、翌11月に伐採の動きが止まることとなった。駅前に建物を建設して本社としての利用を予定していた企業が別会社に吸収され、建設断念を発表したのである。こうして動きが止まり、1年以上が経過した。

 その間に、市は道路整備を変更することで伐採する本数を減少する可能性を検討していたようである。2015年2月に、ほぼ従来どおり24本のプラタナスを伐採するA案と、道路を狭くして11本を残すB案が提案された。3月2日の市議会は、B案では交通面に不安があるとして、A案を選んだ。伐採反対派は、抗議しつつも、当初は状況を眺めていた。連邦自然保護法で、3月1日から9月30日の間は原則として伐採が禁止されているので、十分時間があると考えていたようである。ところが、道路整備という緊急性が優先するという市の意見を、州が3月末に認めた。これに対処するため、反対派は住民投票を求めて住民請求の準備を整え、4月4日から署名活動を開始した。デュイスブルク市の場合、必要な署名数は有権者の4%、1万5千人弱になるので、2万人が目標とされた。

 問題は、プラタナスをいつ伐採するかである。たとえ住民投票を求める署名が始められても、行政は住民投票で決定するまで自由に行動できるので、既成事実をつくる例も見られる。この問題に対処するため、ノルトライン・ヴェストファーレン州は、2007年の自治体法改正で、必要な署名が提出されて住民請求の内容が合法的と確認された後は、請求内容に反する行為を禁止することにした。逆に言うと、請求確定までは伐採が可能である。

 4月10日(金)に、市が伐採を計画しているらしいという噂が飛び交った。翌11日の早朝、市は来週伐採すると発表し、プラタナス下の駐車場に、月曜日朝7時から駐車を禁止すると張り出した。そして4月13日(月)に、木に鳥の巣等が造られていないかチェックが始まり、小さい木が1本切られた。夕方になり、「市が夜陰に乗じて伐採する」という噂が流れ、反対派は暗いうちに集まったそうだ。しかし夜は何事もなく経過し、火曜日の朝7時45分から本格的な伐採作業が始まった。反対派が妨害しないように警官が動員され、作業の場はフェンスで守られた。

 現在残されている樹木が、2本ある。1本はカラスの巣が確認されたものであり、もう1本はその木と枝が絡まっている隣接した樹木である。もしカラスが別の巣に移ったら、伐採されるだろう。反対派は、この樹木のために署名活動を続けると言っているが、まだ2千人しか集まっていないそうなので、伐採後の目標達成は無理だろう。なお、この時期に伐採したのは、道路整備の前提となる地下の配管工事に取りかかるためだそうである。
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| 居住環境や緑・公害 | 18:31 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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