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ますます大きくなるトラック - ギガライナーの走行実験

 ドイツの幹線道路では、日本よりも多くの大型トラックを見かけるのが普通である。たとえば下の写真は、デュイスブルク市内を歩いていた時のもので、住宅地と公園の間を走る州道を、多数の大きな車が走っている光景に驚いた。実は、この数百メートル先にアウトバーンのインターチェンジがあるので、トラックの多くはアウトバーンに入ると思われる。工業都市デュイスブルクでは余り珍しくない光景かもしれないが、住宅地と公園を分断しているようで、残念である。

デュイスブルク北部、マイデリッヒの住宅地脇を走る州道の光景。この数百メートル先には、アウトバーンのインターチェンジがある。(2013年撮影)
 ネットで調べたところ、日本では、トラックの長さは12m、総重量20トンまでとなっているようだ。高速道路などでは25トンまで可能で、長さもセミトレーラーで16.5m、フルトレーラーでは18mまで許容されるようである。ただ、実際には15mを超えるようなトラックには、ほとんどお目にかからない。ドイツはセミトレーラー16.5m、フルトレーラーで18.75mまでと、長さの制限は余り変わらないが、総重量が40トンまで許されている。そして、一番の違いは、その15mを超えるような大きなトラックを、町でよく見かけることである。

 そのドイツで、さらに長いトラックを認めるための社会実験が行われている。旗を振っているのは連邦交通大臣ドブリントで、背後には欧州連合の影が見える。欧州には、ドイツより長いトレーラーを認めている国があり、そこに並ぶことが課題とされているそうだ。そこで、ドブリント大臣は、セミトレーラーを17.8m、フルトレーラーを25.25mまで認める社会実験を始めた。「ギガライナー」とは、この長さが25.25mあるフルトレーラーの愛称である。ただ、総重量は、インフラへの負担に配慮し、40トンのままにされている。

 数年前に開始したこの実験に頑強に抵抗しているのが、ルール地方を含むノルトライン・ヴェストファーレン州(NRW州)である。NRW州はドイツで最も人口密度が高く、従って道路も混雑していて、他の車両に危険だと、実験を認めていなかった。反対する背景として、より大きなトレーラーを認めると、列車に対するトラックの競争力が強くなり、州が目ざしている「貨物輸送における鉄道の活用」に反する結果になる恐れがある。橋梁をはじめとするインフラへの負担も問題だが、総重量は40トンまで据え置かれているので、この点は当面は議論になっていない。

 そのNRW州が、10日ほど前から、17.8mまでのセミトレーラーに限って実験に加わった。この長さになると、貨物を鉄道からトラックへ、そしてその逆方向へと、効率的に移し替えることができるからだそうである。これは、道路から鉄道により多くの貨物を移すというNRWの目標に合致すると説明された。それでも、25.25mのギガライナーは、依然として禁止だそうである。なお、他州におけるギガライナー実験の結果では、燃料使用の抑制などの成果があがっているそうだが、サービスエリアでは適当な駐車場が不足する問題も指摘されている。

 さて、ギガライナーに関する連邦とNRW州の綱引きは、どのような結果になるのだろうか。欧州における交通で重要な位置にあるNRW州で、アウトバーンをはじめとする交通インフラの老朽化がかなり進んでいることは事実なので、NRW州の抵抗を押し切るのは、かなりむずかしいかもしれない。

 ギガライナーの採用は運輸業者の経営にプラスとなるが、NRW州でその運輸業者を困らせているのが、老朽化した橋梁などで迂回が必要になり、追加費用がかかることである。アウトバーンでは、12トン以上の大型トラックには走行距離に応じた走行料金が課せられる。だから、業者は「特定の老朽化区間では、走行料金を免除する」ことを求めている。NRW州の道路を走る運輸業者にとっては、ギガライナーより、老朽化したインフラの改修の方がはるかに重要なようである。
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| アウトバーンや交通規制 | 22:51 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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Bプランの特例許可で住宅地完成へ - 鉄道博物館そば

 ドイツのまちづくりで、とくに有名なのが「Bプラン」である。規定が詳細だとして「地区詳細計画」と訳す人もいるほどである。その詳細な規定を満たすと建築の自由度が制限されるとして、「ドイツは建築不自由の国」だとも言われている。いずれも事実ではあるが、事実にはいろんな面がある:たとえば対象地区の範囲を示す線だけで、何も規定が図示されていないBプランもある。そして、「Bプランの規定を免除する特例許可が行われている」ことも、事実である。

 私は、特例許可について、「Bプラン策定に関わった人は、別の案もあり得ることを知っているので、詳細な計画ほど特例許可が多くなる傾向がある」という報告を読んだことがある。Bプランの実態から考え、「確かにそうだろうな」と納得したが、特例許可の実例を確認したわけではない。先日、ボーフム市で、これから特例許可が行われるという報道があった。その背景を説明した区評議会資料も入手できたので、概要を紹介したい。

道路に沿って9棟のタウンハウスが並ぶルール河畔パーク。この右奥の地区へ拡張される予定で、さらに奥にはボーフム鉄道博物館がある。(2009年撮影)

 特例許可が予定されているのは、ボーフム市南西のエッセン市との境界近くにある住宅地「ルール河畔パーク」である。ここはもともと貨物駅の跡地で、さらに奥にあった車両基地は「ボーフム鉄道博物館」として人気を集めている。鉄道は貨物駅跡地を開発して低層住宅地に整備する案をつくり、Bプランを策定した。Bプランは2002年に議決され、土地を所有する鉄道が選定していたデベロッパーは直ちに市と都市計画契約を結び、住宅の販売と建設を開始した。

 住宅地は全体で8ha強あり、7工区に分けられる。ところが、鉄道が売却したのは1~4工区で、5~7工区は、まだ土壌汚染の調査が続いていた。その後、5~7工区も土壌の浄化が終了し、2012年から開発するデベロッパーが探された。2015年に入り、デベロッパーとの交渉もまとまり、いよいよ土地を売却することとなったが、Bプラン決定からすでに10年以上が経過し、住宅建設についての考えが変わり、Bプランの規定に沿えない点も出てきていた。そこで、市の建築許可を担当する部門を加えて交渉が行われ、特例許可の見通しが立った。Bプランに反する部分も出てくるので、摩擦を避けるため、市は地元の区評議会に対し、事前に状況を説明することにしたわけである。

 その説明によると、Bプランからの特例許可が行われる背景には、プラン決定から10年以上が経過したことがあるようだ。鉄道博物館では、入口を移設し、「ルール河畔パーク」の隣接地に駐車場を設置することになっていた。そこで問題になるのが、駐車場の騒音である。このため、駐車場を背にする長めの住棟を建設し、騒音が住宅地に侵入するのを防ぐ計画にされたが、そのためには特例許可が必要になる。また、旧プランは、タウンハウス、テラスハウスと、少数の一戸建てで構成されており、二戸建て(セミ・デタッチトハウス)はなかった。近年の傾向から考え、一戸建てを止め、二戸建てにするのにも、特例許可が必要になる。これらの結果、駐車場がより多く必要になるので、この点でも当初プランからの離反が必要になる。

 しかし、全体として3階建てまでの住宅地は維持され、「プランの基本には抵触しない」。これは、建設法典第31条にある「特例許可」の前提として重要である。もちろん、「この際、Bプランを修正する」という方法もあるだろう。しかし、それには費用と時間がかかる。市は、新たなデベロッパーと都市計画契約を行い、いろいろ義務づけを求める予定なので、「そこまでは必要ない」というわけである。たしかにBプランには厳しい規定があるが、このように特定許可を活用し、柔軟に対処されているのがドイツの現実、というわけである。だから、まちづくりを運用まで含めて考えると、日本とドイツとの差は「それほど大きくはない」と言える。

| 居住環境や緑・公害 | 12:46 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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