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死者21名のラブパレード事件で起訴された10名を不問に

 6年前にデュイスブルクのラブ・パレード起きた死者21名という大規模な群集事故の責任をめぐり、2年前に10名が起訴された。起訴を受け、デュイスブルク地方裁判所では、3名の裁判官が、刑事事件として扱うかどうかを検討していた。そして、昨日4月5日に、「10名を刑事裁判の被告として扱う法廷は開かない」と決定したことが明らかにされた。

 この決定を知り、被害者の関係者はもちろん、デュイスブルク市長やノルトライン・ヴェストファーレン州首相も、怒りを示している。「犠牲者が、再び犠牲にされた」というコメントも聞かれる。ドイツの刑法で有罪とされるためには、個人的な責任が示されることが必要だが、その点が不十分だったそうである。起訴では、イギリスのパニック研究家であるStill教授の報告書が基礎にされていた。しかし、その報告書は、裁判官の眼から見て不十分で、個人の行為と事故との因果関係が、納得できるレベルでは示されていなかったらしい。

 思い出されるのが、日本の「明石花火大会歩道橋事故」で、起訴された5人は有罪とされたが、明石警察署の署長と副署長が起訴されず、それが検察審査会による訴追制度の改革につながったことである。ラブ・パレードの場合も、警察署長と副署長に相当しそうな人は起訴されていないが、それに加え、起訴された10人についても無罪となるわけである。だから、被害者やその関係者の無念さは、とても大きいと思われる。

 起訴までに検察が検討した資料も、決定にあたって裁判官が検討した資料も、膨大なものだそうだ。10名を不問にするという決定だけでも、460ページに及ぶそうだ。検察が地方裁判所の決定に異議を申し出ているそうなので、違う展開になる可能性も残されてはいるが、結論が変わる可能性はほとんどないだろう。

 起訴された10名の内訳は、以前紹介したとおりで、私には納得しにくい選定だった。今回の決定よりも、起訴された10名の選定の方に、より違和感を感じた。最も重要な問題は、このような事故を再び起こさないことである。そちらの方は、ぬかることなくしっかりと進めてほしいと思う。
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| 町の話題いろいろ | 18:01 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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賃貸住宅での保育を認める判決に喜ぶ保育ママ、ペトラさん

 「保育園落ちた日本死ね!!!」という投稿から1ヶ月以上が経過したが、保育所問題は現在も注目を集めている。少子化と男女共生社会を背景にした、非常に重要な問題だからである。ドイツでも、保育所への入所を希望する全ての児童を受け入れるという連邦の方針を受け、現在も市町村は保育所建設に苦心している。その一方で、「個人が自宅で行う零細な保育も一定の役割を果たしている」ことがわかる記事もある。個人が保育を担うことは、出生率が高いフランスではさらに大きな役割を担っているそうである。だから、ドイツの状況は、日本とフランスの中間に位置すると考えられる。

 ミュルハイムに住むペトラさんは、政府の資金援助で建築された社会住宅に住んでいる。そのおかげで、住宅は96㎡と広く、庭には遊具も置かれている。ペトラさんは子ども好きで、保母の資格も持っている。すでに子どもを育て上げ、住まいに余裕が出てきた10年前から、自宅で小さい子どもの保育を引き受けるようになった。子どもは市の青少年局から紹介を受け、人数は2名か3名である。

住棟のそばにある遊び場。ペトラさんだけでなく、最高で5組の保母が利用していたこともあったそうである。(Der Westen紙より)

 保育を始める際には、当時の住宅管理人に問い合わせたが、制限はないと言われたそうだ。しかし、現在の家主は騒音を問題にして、保育をやめるように求めてきた。建物のすぐそばにある庭に遊び場があり、保育でも利用しているが、その遊び場からの騒音のため、他の借家人にはバルコニーに滞在することが受忍できない、というのが家主側の主な言い分である。そこで、保育して良いことの確認を求め、ペトラさんが提訴した。

 一審では、彼女は敗訴した。判決は、保育は障害を生む可能性があり、この住宅は居住目的に借りただけであり、それを超える利用には認可が必要だという論理で、内容が抽象的であった。「3人までの世話は、賃貸住宅でも認可なしに許容されるという判決が沢山ある」と納得できないペトラさんは、控訴した。

 そして先日、控訴審の決定があった。その論理の中心は、「賃貸住宅で自分の子どもを育てるのか、あるいは他人の子どもを育てるのかは、重要な違いではない」ということである。しかも、自分の子どもの場合は、友人が遊びに来ることもあり、夜間も子どもがいることを考えると、最大でも3人で、時間も限られているペトラさんのケースでは、騒音の被害はかえって少ない、と示した。

 私は、家主の「屋外にある遊び場からの騒音がバルコニーの滞在を不快にしている」という言い分には、違和感を感じる。これまで、いろんな騒音紛争を聞いてきた経験から、アパートの場合は上階や隣接住戸からの騒音の方がはるかに深刻で、対策も難しいはずだ、と思うからである。だから、一審の決定は抽象的で承服できないというペトラさんの言い分を、スッと理解できる。

 この話しから、個人として2~3人の乳幼児の保育を引き受けることが、ドイツでは一定の役割を認められ、育児に貢献していることがわかる。そのドイツでも、賃貸住宅で保育所を経営することは、家主の理解が必要で、困難なようである。3年前に、集合住宅での保育所経営を目ざし、理解ある家主を探していた2人は、その後、首尾良く場所を見つけることができたのだろうか。ドイツと日本、そしてフランスと、保育環境が似ているようで微妙な違いが存在するようだ。

| ドイツと日本と | 14:33 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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