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年齢なきサイクリング:高齢者にも「風を髪で受ける権利」

 ドルトムントのニュースを眺めていて、「リクシャ」という、日本語起源と考えられる言葉があり、昔の「輪タク」(自転車タクシーの略で、戦後の一時期に活躍した)のような写真がある記事を見つけた。「都市交通に役立てようというのかな」と思い、とりあえずダウンロードしておいた。

「年齢なきサイクリング」のシンボルマーク
 数日後に読んでみると、都市交通として活用するという内容ではなく、むしろ自転車に乗られなくなった高齢者を連れだし、高齢者から昔の話しも聞くという、高齢者介護に関するプロジェクトの記事だとわかった。プロジェクトが始まったのはデンマークのようだが、すでに世界各地に広がりつつあるそうだ。ドイツでは、ベルリンやエッセンに取り組んでいる団体があり、ドルトムントでも検討が進んでいる、という記事だった。

 ユーチューブで調べると、デンマークでの首都コペンハーゲンにおける活動を紹介した映像を見つけることができた。英語で字幕がついているので、ドイツの映像よりわかりやすい。映像を見ると、プロジェクトが高齢者にも「風を髪で受ける権利」があると主張している意味も伝わってくる。この映像に出て来るコペンハーゲンは、自転車に優しい町のようだ。「コペンハーゲンの自転車改革の旅」という映像を見ると、日本と比較し、はるかに多くの自転車利用者がいることがわかる。デンマークには大きな自動車メーカーはないので、日本やドイツと比較して自転車の活用を受け入れやすい政治的風土もあると思われる。

 「輪タク」で思い出すのが、ベルリンで始まった自転車タクシーの「ベロタクシー」で、すでに日本各地で運航されている。この「年齢なきサイクリング」は趣旨がかなり違うプロジェクトで、現在の日本では「高齢者が事故の危険にさらされる」と敬遠されるかもしれない。だから、日本では「自転車に優しいまちづくり」を進めることが前提になるかもしれないな、と感じた。
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| 自転車や歩道・舗装 | 14:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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産業廃棄物の丘から「タイガー&タートル」のメッセージ

 デュイスブルク市南部には、ライン川そばにあった亜鉛精錬工場の跡地から出た有害物質で汚染された土を積み上げ、無害な土で覆った上で、緑化した丘がある。ここに、2010年の「欧州文化首都年」の一環として、芸術作品を置くことになった(2009年に選定され、2010年に建設を始め、2011年秋に完成した)。選ばれて設置されたのが、写真のような作品で、「タイガー&タートル」という名称がつけられている。私も、近くまで行く機会があったので、ジェットコースターに似た作品に登り、歩いてきた。素晴らしい眺めで、とても気持ちが良かった。

「タイガー&タートル」を西を流れるライン川方向から見た遠景と、すぐ下から撮影した近景。近くで見ると、ダイナミックで非常に力強い感じを受ける。(2012年撮影)
 先週、デュイスブルクの美術館で、作品の作者から、制作した意図の説明を聞く会が行われた。私はこれまで、作品につけられた名称が「虎と亀」を示すことは気づいていたが、意味は全く気にしていなかった。ところが、その記事によると、この名称が、製作意図を示すキーの役割を果たしていた。

 作品の作者は、アトリエで政治や社会の問いを取りあげ、「対立について議論し、強化する」のだそうである。この作品で取りあげられたのは、「速いと遅い」というコントラストである。恐らく、この形を見て、多くの人は「ジェットコースター」をイメージするだろう。しかし、作品のところへ来てみると、そこには階段があり、一段づつ登らねばならない。だから、「速いと遅い」の対立がこの作品になったという話しは、とても良く理解できる。

 名称として虎と亀が選ばれたのは、もちろんスピードがポイントである。しかし、それだけでなく、タイガーはターボ資本主義のシンボルで、滅びる恐れもあると説明された。一方、カメは中国で賢明さのシンボルで、敗れないことも意味するそうである。この作品は、汚染土を覆って緑化した丘に設置されることも考えて製作されたそうで、作者は寿命があると考えており、「永遠のランドマーク」とは思っていないそうである。名称をドイツ語でなく英語にした説明はなかったが、英語ならどちらも"T"で始まることが関係しているのかもしれない。

 もちろん、芸術作品は、作者が考えたことを越え、人々に訴えかけるものである。「速いと遅い」のコントラストは、私たちに何を語りかけるのだろうか。みなさんも、機会があればデュイスブルク市南部へ足を伸ばし、作品に登ってみることを勧めたい。なお、私が訪問したのはたまたま日曜日だったので登れたが、曜日によっては登れないそうなので、注意が必要である。

| 居住環境や緑・公害 | 12:42 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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アウトレット建設をめぐりデュイスブルクで秋に住民投票

 今年の秋には、ドイツ連邦議会の選挙が9月24日に行われる。デュイスブルクでは、その日に、2月に行われた市議会決定の可否を巡る住民投票が、同時に行われることが決まった。これまでも、ルール地方における住民投票を何回が紹介してきたが、今回のように商業施設を対象とする投票は初めてである。これまでにブログで紹介した住民投票は、次の3件である。

ケーニッヒ通りを歩いて市役所へ署名提出に向かうイニシアティブ代表。(Der Westen紙より)
 3件とも公共施設の建設を巡るもので、全て「建設しない」ことを求めた住民側の勝利で終わっている。グラートベックでは交通公害が主な争点だったが、エッセンとオーバーハウゼンの場合は、市財政との関係が争点となった。しかし、今回のアウトレット建設をめぐる投票は、民間商業施設の建設が争点となっており、市財政への直接的な影響はない。この点で、これまでに紹介した住民投票と、かなり性格が異なる。

 計画されたアウトレットは、デザイナーズ・アウトレットセンターとされている。今年1月の時点で、売り場面積は約3万平米、店舗数は140~175と発表されている。この売り場面積と店舗数はドイツ最大だそうで、計画どおりなら、ドイツ最大のブランド商品を販売する店舗群ができることになる。このため、周辺市からは、すでに反対の声が出されている。

 公共施設の建設と異なり、アウトレット建設反対を求めた住民イニシアティブ側が今回の投票で勝利することは、かなり難しいように感じられる。アウトレットが建設され、店舗が増加することは、一般市民にとっては「好ましい」と受け止められる可能性が高い。住民イニシアティブの中心を構成するのは、都心商業者である。アウトレット建設によって都心の売上げが奪われ、その結果として空き店舗が増加し、回り回って買い物の場が減少するということを、市民がどの程度理解して行動するのかが、投票の鍵を握っている。

 もちろん、勝利の可能性もある。今回の住民投票を求める署名活動は、有権者の3%の署名が必要とされた。イニシアティブは、有権者を39万6千人と見積もり、その3%強の1万3千を目ざして署名活動を行った。結果的に2万2500と、目標を1万も超える署名を集めた点からは、イニシアティブの勢いが感じられる。集めた署名のうち、有効な署名がいくつだったのかは公表されていないが、3%をオーバーすることは確実だとして、住民投票の実施が決定された。

 これから投票まで2ヶ月半ある。2大政党のSPD(ドイツ社会民主党)もCDU(キリスト教民主同盟)もアウトレット建設を認めているので、イニシアティブが「風」を期待するのは無理だろう。商店主による草の根の訴えがどこまで市民に浸透するのか、結果が出るのを楽しみにしたい。

 なお、投票にかけられる設問は、回りくどくてわかりにくい。訳すと、次のようになる:「2017年2月1日のデュイスブルク市議会のアウトレットセンターに賛成する基本決定が廃止され、それにより、コロニー通り南の貨物駅用地へのアウトレットセンターのための建設誘導計画とその他の手続き(例:小売り構想の変更)は行わなくてよい、となるべきか。」アウトレットに反対する者は「はい」、誘致に賛成する者は「いいえ」と投票するのだそうである。もう少し分かりやすい設問にしてほしかったと感じる市民が、多くいるのではないだろうか。

| 中心市街地や近隣供給 | 14:12 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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