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デュイスブルク市内を走り始めた移動銀行車

 先月から、デュイスブルク市を、写真のような真っ赤な車が走り回っている。もちろん、走っている時間よりも、駐車して顧客にサービスしている時間の方が長い - この車は、近くに銀行がなくて困っている「銀行難民」を対象とする移動銀行窓口車である。駐車する場所は、市南部の3箇所と北部の3箇所で、週に各2回、1時間ずつである。

 日本にも、「買い物難民」ならぬ「銀行難民」を対象とする移動銀行窓口車を有す銀行があるそうだが、走っているのは主に過疎地である。一方、私が観察している「よもやま通信6都市」はルール大都市圏の中心部である。そこに「移動銀行車」が登場したことには、少し違和感も感じられる。そこで、事情を探ってみた。

9月から走り出した真っ赤な貯蓄銀行バス。後ろ側がATMで、前の入口から入ると小さい相談室があり、印字機もある。(デュイスブルク貯蓄銀行ホームページより)
 このバスを運営しているのは、デュイスブルク貯蓄銀行である。ドイツでは、ほとんどの都市に貯蓄銀行がある。庶民の金融機関として活躍しており、日本の「郵便局」のような存在になっている。市の子会社だが、他市の貯蓄銀行とネットワークを形成している。ルール地方があるノルトライン・ヴェストファーレン州の連合体は、現在、職員研修のためのアカデミーをドルトムントに建設中である。

 デュイスブルク市は人口49万人、面積が233平方キロの大都市である。住民に身近な存在である貯蓄銀行は、そこに42店舗と、きめ細かいネットワークを整備していた。しかし、2年半前に、店舗を半減する計画を発表した。デュイスブルクは7つの区で構成されているので、まず各区に1つ、計7つの旗艦店を置く。そして、相談できる銀行職員を揃えた店舗を13箇所整備し、計20店の体制にする、という計画である。

 計画の背後にあるのは、顧客行動の変化と、銀行を取りまく厳しい状況(とくに世界的な低金利)である。顧客行動を変えた最大の要因は「デジタル化」で、オンラインバンキングの普及により、顧客の2人に1人は、年間に1回以下しか店舗を訪問しなくなっているそうだ。この状況に対応して、店舗数を絞り、その代わりに多くの相談室を備えた店舗での投資や融資の相談を充実させる、という計画である。貯蓄銀行も、存続のためには競争力を維持しなければならないと、慎重に計画されたそうである。

 この結果、市の南部と北部では、店舗がなくなる地区が出てくる。そこで「移動銀行車」の登場となった。実は、デュイスブルク貯蓄銀行は1960年代にも「移動銀行車」を使用していたが、当時は「店舗拡張期」で、店舗を建設するまでの暫定措置的なもので、車もバスを改造したものだった。しかし、今回は過渡的な措置ではない。車も、デジタル化の進展で、高度な機能を備えた専用車になっている。

 移動銀行車は、とくに高齢者に歓迎されている。運転してきた銀行員が使用方法を説明することも、少なくない。デジタル化の時代において高齢者をどうサポートするかは、日本でも大きな課題である。
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| 中心市街地や近隣供給 | 17:35 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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デュイスブルク市民は住民投票でアウトレット進出を拒否

 先週日曜日の9月24日に、このブログでも予告していたアウトレット建設をめぐるデュイスブルクの住民投票が実施され、僅差でアウトレットセンターの進出が拒否された。デュイスブルク市議会のアウトレットセンターに賛成する基本決定を廃止して手続きを停止すべきかという質問に対し、「はい」が51.1%、「いいえ」が48.9%、という最終結果である。有権者の59.9%にあたる22万人近くの市民が投票し、差は4,683票という接戦だった。

 投票率の高さは、住民投票が連邦議会選挙と同日投票になったためでもある。連邦議会選挙という、最も多数の市民が投票に参加する機会を利用することは、市民に決定を委ねるという住民投票の趣旨に合致する上、投票のための費用も節約できる。デュイスブルクでは、同時に市長選挙も行われたため、「トリプル選挙」となり、市民の関心を高める効果があった。投票日に、たまたまデュイスブルク市内各地を視察して回っていた私は、多くの市民が投票所へと来る姿を見ることができた。

中心商店街にある都心ショッピングセンターの入口に大きく掲げられた、「はい」への投票を宣伝する緑色のパネル。投票日に都心は買物日曜日で、多数の市民がぶらつき、オープンカフェでくつろぐ姿も見られた。(投票当日に撮影)
 当初、私はこのような結果になるとは予想していなかった。これまでに成功した住民投票は、公共施設の建設を止めて費用を節減することを求めるものが中心であった。今回の投票は大型店進出をめぐるもので、店舗が増えることは一般消費者にとってはプラスなので、進出を歓迎する市民が多いはずだと思っていた。大抵の日本人も、同じように感じることだろう。進出するのが一般の大型店ではなくアウトレット店であることも、都心への悪影響を少なくする効果を有するはずである。それでも都心の衰退を心配し、進出を止めたデュイスブルク市民が多数を占めたことに敬意を表し、都心商業のために喜びたいと思う。

 選挙が近づいてくると、新聞社が結果を予想する電話調査を行った。それによると、態度を決めている者のうちでは進出反対の方が多いという結果が得られた。このためか、最後の段階では、用地を所有するクリーガーもデュイスブルクに乗り込んで宣伝に努めた。ただ、私はクリーガー側の戦略にも問題があったと思う。当初、クリーガー側は、デュイスブルク市の職場が増え、周辺から買い物に来る客も増えて市が発展することを宣伝していた。しかし、そのうちに、もし住民投票で敗れた場合、中央駅そばの貨物駅跡地は空き地のままになるという脅しも行うようになった。クリーガーは家具店で、もともとここに家具店を建設するとして連邦鉄道から用地を取得した。しかし、南に隣接する州都デュッセルドルフに進出できることになって方針を転換し、デュイスブルクを空き地のまま放置していた訳なので、この脅しは逆にクリーガーは勝手だと思わせた可能性もある。

 ところで、今回の住民投票はトリプル選挙として行われたが、各党や市長候補者は、アウトレット進出への賛否を示していた。その結果を比較すると、住民投票が市民の意思を生かす決定方法として長所を有していることがわかる。アウトレット進出の方針は、市議会第一党の社会民主党(SPD )と、第二党のキリスト教民主同盟(CDU)の賛成によって可決されたものである。今回、同時に行われた連邦議会選挙で、候補者に投票する第一票、政党に投票する第二票とも、デュイスブルク市ではSPDが最も多数の票を獲得し、次がCDUだった。そして、両党の合計は、第一票で64.3%、政党に投票する第二票でも57.0%と過半数を超えた。市長選では、アウトレット賛成を表明したのは現市長でSPDのリンクだけだったが、彼は56.9%を獲得して再選された。CDUは緑の党や市民リストなどと共同で候補を立て、その候補はアウトレット反対を表明したが、25.7%を獲得するにとどまった。

 この結果は、政党や市長候補者への投票と、特定の重要問題への投票は別で、住民投票にそれなりの効果があることを示している。もちろん、市長選で、リンク候補は「アウトレットについては投票結果を尊重する」と明言していた。だから、アウトレットに反対している市民も、安心してリンクに投票できたはずである。今回の投票結果は、住民投票という直接民主制と、市議会と市長という代表民主制の関係を考える上で、興味あるデータを提供していると言えるだろう。

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