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エネルギー会社Teldafaxの倒産:発送電分離の行方

 電力・ガスを安値で販売し、多くの顧客を獲得していたドイツのTeldafax社が、6月中旬に会社整理の手続きを開始し、月末には顧客への詐欺の疑いで警察から捜査を受けた。福島第一原発の影響で、日本では電力会社の将来をめぐる議論が盛んになってきている。そのなかに、ドイツの現状から考え、両立の困難なことが同時に語られていると思われるので、この問題を紹介したい。

 ドイツの「発送電分離」に関して、「顧客がどこから電気を買うか選択でき、水力やソーラーなどの地球に優しい電力を選ぶこともできる」と、バラ色の報道が行われている。しかし、世間には「いいことばかり」というものは少ない。長所と短所は表裏一体である。

 ドイツでは「発送電分離」が義務ではなく、発電と送電を行う会社も多い。もともと、旧西ドイツでは、市町村の子会社が電力を供給している例が多く(通例、同時に熱やガスも供給している)、自ら発電を行い、不足する電力を発電会社から購入していた。それが、電力の自由化により、送電会社は、その送配電網を他社に対しても開かねばならなくなった。たとえばドルトムントの場合、市の子会社DSW21が送配電網を維持し、発電も行っており、以前はみなDSW21から電力を購入していた。それが、「電力自由化」で、住民はDSW21から電気を購入しても、他社から購入してもいいようになった。他社から購入する場合、料金はその会社に支払い、そこから送配電料金がDSW21に払われるシステムになっている。

 さて、Teldafaxは2007年に設立された会社で、電力のディスカウントで多くの顧客を獲得した。報道によると、最も多い時は80万の顧客をかかえていたそうだ。この会社は発電会社でも送配電会社でもなく、発電会社から電力を買って顧客に販売する仲介業者である。ディスカウントの中心となったのが「料金前払い制」で、事前に翌年の料金を支払うことで、安く供給を受ける。ところが、今年の2月に、「今後は前納による契約を行わない」と発表があった。理由は、「購入価格より安く販売することも少なくなく、この営業モデルで破滅の淵に置いつめられているため」と説明されている。2月中旬には、Teldafaxに送電網を提供している各地の会社が、Teldafaxとの契約を解除するニュースが流れるようになった。昨年から送配電料金の支払いが遅れ気味で、請求してもなかなか支払われない、という話しである。

 ドルトムントでも、千名以上いたTeldafaxの顧客には、3月1日から送配電線を有するDSW21が代わりに供給を開始した。その数日後にはTeldafaxとの間で妥協が成立し、再びTeldafaxとの契約に戻ったそうだが、結局6月にはTeldafaxが破産手続きに入り、供給がストップされた。顧客がTeldafaxに支払っていた前払い料金は、ほとんど戻って来ないだろうと予想されている。もちろん、DSW21など、各地でTeldafaxに送配電網を提供していた会社も、損害を免れないであろう。

 発電と送配電の分離にもいろいろな形態があり、注意しないと顧客がマイナスを受けることになる。また、現在、日本では風力やソーラー発電を電力会社に全量買い取らせる法案が審議されているそうだが、その場合、発送電分離を行うと、購入する側の電力会社が「送電会社」になってしまうので、買い取りが無理になるように感じられるが、どうなんだろう。それとも、発電会社に買い取らせるのだろうか。

 いずれにせよ、電力供給は重要な問題なので、思いつきではない、しっかりした議論を行ってほしい、と希望する。

 
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| エネルギー・地球環境 | 23:11 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

初めまして。
「発送電分離 長所と短所」
で調べていて、ここに辿り着きました。

この問題、色々考えるべき点は多いけれど、この度の原発の問題&電力会社の対応などが響き、「発送電分離を急ぐべき」と意気込む人が多いと感じます。

そんな人に限り、思いこみだけで見切り発車しているところがあるから、「発送電分離の短所の克服を」の質問をぶつけると、
「成らし効果で克服できる」
とか、
「発送電分離に理解を示さないのは、東電の手先」
――と決めつけてくるから、何か空恐ろしいです。

2年前、衆議院総選挙にて自民党大敗&民主党圧勝で政権交代が起きました。

それは良いのですが、
「政権交代を成した、さぁ、新しい時代に入るぞ」
――と、思いこみだけで投票している人達が多かったと感じています。

つまり、「民主党の欠点」に眼をつぶっている事にも気付かずに投票し、“懸念”を表明する人を白眼視する――これが、“民主主義”と言えるのでしょうか?

こんな、「常識的な事は、誰でもやれるに決まっている」と決めつけて憚らない人達ばかりだからこそ、電力会社に限らず企業に求められる“企業統治のあり方”とそその“裏側”を考える事も出来ず、今回の福島第一発電所の事故を引き起こしたんだろうに――と、感じています。

これでは、発送電分離に踏み切っても混乱が眼に見えているし、混乱に対処できないまま「成らし効果」で対処する事も出来ず、混乱を加速するだけになるのでは?――そんな事を、感じています。

私は、「発送電分離」の議論は賛成です。
ですが、東京電力への批判と発送電分離がワンセットになっている所に不安を感じます。
抱え込む「欠点」を置き去りにしていると感じる為です。

そもそも、日本にて盛り上がる「理由」の一つが「東電への制裁」があり、対応の悪さも重なった事で、感情的に昂ぶっている事が大きな要因だからでしょう。

それに、発送電分離を徹底できたとしても、「企業&組織の腐敗」の問題は起きると思う。
Teldafaxの問題はそれを示していると言えると思うし、かつてのエンロンの問題もある。

そもそも、企業統治の問題は、組織毎に異なる事情の中から起きる訳ですから、それだけ難しいのです。

もっと、色々考えるべきと思いますね。

| Masaya | 2011/12/28 21:53 | URL |

Masayaさん、貴重なコメントをありがとうございました。実は、私は以前から原発に不安を感じていました。だから、「安全神話」を信じていた人よりは、今回の事故への驚きが少なかったように感じています。そして、事故の後、各地で原発の稼動が停止されている状況には、少し違和感も感じます。

おそらく、民主主義には、「いろいろな考えの人がいることを暖かく見まもる」ことが含まれているのではないでしょうか。だから、活発な議論が行われるはずです。

| comej | 2011/12/29 11:44 | URL |

「民度」を信用出来ないのが、悲しいです。

お久しぶりです。
ご返事を戴き、有難うございます。

原発問題にせよ発送電分離にせよ、不安が拭えません。
一例として、発送電分離の“推進派”の父の意見を聞いた事を挙げますが、どうしても、考えの浅さが透けて見える為です。

「電力が不安定になって、停電が起きようが仕方が無い。その覚悟をすれば良い」
――と、軽々しく言ってのけたからです。
心底愕然としたし、同時に、呆れました。

このような物言いをする人程、いざ停電に直面したら、
「電力会社よ、何をやってる!」
――と怒るのが眼に見えている為です。

しかも……。
それを予感させる出来事があり、それを私は憶えています。
「フジテレビとライブドアによる、ニッポン放送株を巡る攻防」
です。

その時は、父はライブドアを支持していました。
インターネットの「可能性」にのめり込んでいて、事業の拡がりを感じていたのと、
「古い企業は、淘汰されるべき」
――と考えていた様なのです。

解らなくは無いけれど、「何故、古い体質になったか」を問うていない気がします。

「大企業に入れば、人生は安泰」
――と捉える空気が求職者の間に根強く、世間&社会もそれに同調する傾向がある中、“自分の事ばかり考える”傾向が企業をダメにしているのだ――と、私は思うのですが。

企業の在り方はさて置き、私は、その時のライブドアのやり方は危なっかしいと感じていました。

確かに、「時間外の株取引」は違法では無かった。
でも、何の前触れも無しに株を取得して「筆頭株主になりました」と主張しても、それを受け容れる人はどれだけ居るのでしょうか?

せめて、内容証明を複数回出すなりして、「フジテレビの対応が悪い」と言う状況を生み出した上で実行していれば、変わっていたと思うのです。

それを父に指摘し、「自分は、消極的にフジテレビを支持してる」と言うと、
「お前のその考えじゃ、社会じゃやっていけない」
――と言い放たれ、ビックリしました。
私の身の回りでは、ライブドアに批判的な意見が多かった為です。

その後、一年経って、ライブドアには強制捜査が入り、落ちぶれていく事に成るのですが。

そもそも父は、“結果論者”で、何でも“社会人の目線”で捉える癖がある。

その為、私の中学生時代に、人間関係でトラブルが起きて困った時にも、
「いじめられるのが好きなんだね」
――と、決めつけてくる様な人なのですから。

――この様に、安易に考える人が多いのかなぁ?……と、思います。

なので、「発送電分離を急ぐべき」と言う人の意見自体信用が置けず、電力を巡る問題の“本質”に切り込む事無く終わりそうだ――と予想できるところが、悲しいですね。

| Masaya | 2012/01/23 11:18 | URL |

 ご意見をありがとうございました。偶然ですが、今日の新聞に、東京電力に公的資金を注入した場合の経営形態を検討しているという記事が載っていました。経営透明化のため、「社内分社」を行うそうです。高いコストを削減するためには確かに競争は必要で、今後の行方を注意して見まもりたいと思っています。

| comej | 2012/01/23 22:20 | URL |

ご返事、有難うございます。

なるほど、『東京電力、社内分社の検討』――ですか……。

でも、これは。
例えば、関東以外にも発電所はあるし、“東京目線”だけでは対応できない事も多いでしょうから、“国有化”以前に、理に叶ってるかも知れませんね。

確かに、“競争”も必要でしょう。
でも、消費者にとって“理解しやすい制度”であり、それを消費者自身が知悉する“覚悟”が必要だと思います。

ただ、その“覚悟”が、必ずしも出来ていない気もします。
「電気の仕組み」を教えられる事が無いから。

電気の問題一つにしても、「発電所から家庭までの電気の流れ」を学校などで教えられる事は殆ど無く、その仕組みと有りがたさを実感できていないと思うのです。

その「教育」も必要だろうと思います。

何れにせよ、今後の成り行きに注目すべき――ですよね。

それでは、またです。

| Masaya | 2012/01/23 23:15 | URL |















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